各ブランドの近況と展望を、KTMジャパンの取締役ジェネラルマネージャー西光寿氏に聞いた。
▼KTM(オーストリア)
ダカールラリーで19回もの勝利を収め、23年はモトGPフル参戦7年目にしてコンストラクターポイント2位となったKTM。〝READY TO RACE〟をスローガンに掲げ、モータースポーツの世界で躍進を遂げている。
クラシックスタイルのロードスポーツの人気が高まっている現在の日本市場においては難しい面もあるが、輸入小型二輪車でシェア4位を争う主要ブランドだ。小型二輪車だけでなく、軽二輪、原付二種、そして競技用オフロードモデルなど幅広いラインアップを強みとしている。
23年については「5月から苦戦している」と西氏は言うが、24年はネイキッドスポーツ「DUKE(デューク)」シリーズが30周年を迎える。大いに盛り上げたいところだ。既に海外では1390スーパーデュークR EVO「ザ・ビースト」、990デューク「ザ・スナイパー」が発表されており、日本導入が待たれる。
そんなニューモデルラッシュのなか、先鋒を務めるのは390デューク。いまホットな400ccクラスに、税込78万9000円で投じる。
「排気量は従来型に比べて25.7ccアップの398.7ccとなっている。開発当初は『490デューク』となる可能性もあったが、400cc以下にしようと日本から猛烈に主張した」
冗談めかして笑う西氏も、この機種に自信を持っており「登録でき次第、早く乗りたい」とワクワクした様子だ。最高出力は44psから45psにアップ。ユーロ5にも適合し、走行モードは「ストリート」と「レイン」に切替可能。アクセル全開でクラッチをつないでも、7000rpmでしっかりロケットスタートを決めることができる「ローンチコントロール」も初めて備えている。
「輸入メーカーの400ccクラスが増え、市場もより盛り上がるだろう。この390デュークを選んでくださったユーザーが3年後、あるいは5年後の車検時にステップアップしてくれる可能性も」そう期待を寄せる。
▼ハスクバーナ・モーターサイクルズ(スウェーデンが起源)
オフロードレースの世界で名を馳せたブランドだ。現在は18年デビューのネイキッド「ヴィットピレン・スヴァルトピレン」シリーズが定番人気となっている。
加えて23年はアドベンチャーツアラー「ノーデン901」に、WP製XPLORサスペンションを装備した「ノーデン901エクスペディション」が登場。ラインアップの充実により、徐々にセールスも向上中という。
「1000cc超の大型アドベンチャーをはじめ、ネイキッド、アメリカンから乗り換える方も。ブランドの平均単価が上がってきていて、ディーラーにも当社にも喜ばしい」
豊富なラインアップを持つオフロードモデルと、それを得意とするディーラーが多いこのブランド。独自の強みを活かした販売を展開したいと考えている。
▼GASGAS(スペイン)
オフロードバイクを中心としつつ、近年では「SM700」「EM700」といったロードモデルもラインアップに加えたGASGAS。エンデューロシーンの盛り上がりを受け、エンデューロモデルが好調だ。
「例えば2ストロークのEC250がエントリーモデルとして人気。ニッチな需要をとらえている」
▼MVアグスタ(イタリア)
KTM AGがMVアグスタモーターS.P.Aの株式25.1%を取得したことで、日本でもKTMジャパンが取り扱うこととなった。今後は26年春頃をめどに過半数の株式を取得することで合意済み。
「よりKTM流のビジネスになっていくだろう」
西氏はそう見る。従来通りハンドメイドでの少量生産体制ではやはり安定供給が難しく、顧客を待たせてしまうことが少なくない。現在は部品調達や製品輸送の効率化を進めており、増産体制が築かれそうだ。
「車両供給の安定化と共に、製品の耐久性向上も図っている」
メーカーサポートとして、従来の保証期間が3年(一部機種は2年)であったところを、23年モデルから全機種を4年間保証とする。
日本国内では現在7店舗の販売網を、24年に「2ケタまで拡充できれば」というところ。ラインアップ拡充も見込まれ、まずは前体制で22年に達成したセールス200台ほどに引き上げたい。