社長に就任して4年目に入った野田一夫氏は、この1年を「想定より良かった部分と、厳しかった部分がある」と振り返る。
まず良かった部分とは、二輪車市場の状況。「輸入車は昨年に続きプラスのまま推移すると見ていた通り」という。そしてもう一つ、ハイエンド機種CVOの反響が良く、日本で250台ほど売れていることだ。
「当初、米国本社からの割り当てはもっと少なかった。しかし『日本にはもっとポテンシャルがある』と。より多くの台数を回してもらった。生産キャパとの兼ね合いもあるが、私個人としてはまだ伸ばせると見ている。ブランドをけん引するモデルとして倍増を目指していく」
一方、想定より厳しかった部分は為替の動向とそれによる価格の上昇だという。
「1ドル=150円近い円安局面は、もっと早く収束すると考えていた。物価が上がる中、やはり消費支出が抑えられた。9月頃からはバイクにも影響し、特にエントリーモデルが苦しかった」
HDJのエントリーモデルといえば、23年10月20日には新たにX350とX500が日本デビュー。普通二輪免許で公道走行できること、税込69万9800円と価格を抑えたことが話題となっている。こちらは好調だ。
「X350とX500あわせて、12月初旬時点で1100台以上を受注している。年末までに700台~800台は行くと見ていたが、それを大幅に超えてきた。SNS(会員制交流サイト)などでは、国産人気モデルと比較検討されるコメントも見受けられる。大変良い状況だ。皆さんにHDを知ってもらい、いずれステップアップしていただけたら」
そう期待を寄せる。とはいえ、やはりエントリーモデルばかり販売台数が伸びればいいというものではなく、ハイエンドに近い機種を含め、幅広いラインアップを売る必要はある。
HDJの国内ディーラーは、現在105店舗。ここ数年で少し減ってはいるものの、その数に大きな変化は無い。ただ、中期経営計画にあった新商品の投入が24年で出そろうので、次は各ディーラーの「売る力」を伸ばしていくフェーズだと語る。
「フランチャイズビジネスとしては、HDJが全国的なブランディングとマーケティングを担い、正規ディーラーが地域でのブランディングとマーケティングを担い商品を供給する構図だが、地域での売る力をもっと底上げすることが必要。23年には沖縄店を改装し、只今セールスは好調。24年2月には福岡の店舗が移転オープンする。これは新しいHDディーラーの見本になると位置付けている」
「国内二輪車市場は右肩上がりではない。となれば今後、同じパイを食い合うことになる。そうした中で我々のように高価格商品を売るとき、高付加価値を打ち出さなくてはいけない。自動車ディーラーにせよ、スーパーマーケットにせよ、高価格帯の店であれば大型化・上質化しており、そうした販売手法は学ぶべきだろう」
武器(商品)はそろってきた。あとは売る力を磨き、持続的な成長を。HDJの改革は続く。