バイク事故件数は相変わらず多く、バイクショップにとってそれは明日の痛手、将来の不安につながります。
画像1: vol.38 安全啓蒙トークは将来財産

たとえ被害者であっても事故の当事者になれば、乗り続けたくても「バイクを止めざるを得ない」理由が増え、家族の反対も増えます。

多くのライダーを精査してみると、心構え、安全装備、運転スキルは個人差が非常に大きいという現実があり、お客様それぞれの個性に合わせて、安全をセットでバイクを売っていただきたいと思っています。

「安全に~」という掛け声は抽象的。具体的な対処法を提唱してこそ、真のアドバイスと言えます。それも押し付けがましくない言い回しができたら素晴らしいですね。

安全をセットにしたバイク販売を

具体的に、安全啓蒙に関する3点を提案させていただきます。

①交通安全は「場所とタイミングの選択」で決まります。特に交差点です。全事故の約7割は交差点で発生。バイク直進中に対向右折車が急に飛び出す「右直事故」が交差点事故の約7割。ということは7割×7割の49%、つまり全事故の約半数は交差点の右直事故なのです。

交差点直進通過時は速度をしっかりと落とし、瞬時に前後ブレーキの入力ができるようにブレーキペダルとブレーキレバーの遊びをとって交差点を通過するぐらいの用心深さが必要です。

しかも、普段から正しいブレーキ練習をやっておかないとイザというときにできません。スラロームやサーキット走行もいいですが、何よりも順序立てたブレーキ練習が重要だと考えます。実際に私のスクールでは、低い速度の優しいブレーキ停止から根気良く進めていきます。

たとえブレーキスキルが低くても、早めのブレーキ入力準備こそが正義という理由が理解でき、実践してもらえるのです。急激なブレーキができるから安全とは限らない厳しい現実を知るべきです。

②は装備です。その代表とすべき胸部プロテクターの着用率は低いまま。装着を呼びかけても反応が薄いのが現実です。ショップでは目に入りやすい場所に胸部プロテクターを置き、スタッフは日常からプロテクターを使って、一般ライダーにアピールしてほしいと願います。

③は整備です。タイヤの空気圧と摩耗点検は不可欠。空気圧は月に約0・1kgf/㎠減るだけでなく、燃費悪化、偏摩耗などマイナス要素ばかり。ブレーキパッド残量やドライブチェーンのメンテも重要ですが、それぞれに合わせた微妙な位置合わせが特に重要です。

科学的な論拠を加えて、お客様に関心を持ってもらうための話し方の地道な努力も欠かせません。楽しそうに①②③の話ができるとしたら、それはすでに魅力的なセーフティ・ライディングレッスンなのです。洗練された安全啓蒙トークは、ショップとあなた自身の将来の財産になることでしょう。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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