二輪車の電動化技術・安全運転講習会を開催
電動二輪車技術講習会の会場となった熊本県立矢部高等学校(熊本県上益城山都町)の体育館には、バイク通学をしている生徒を含む120人が集合した。矢部高校は、全国で唯一バイクを使用した部活動があることが特色で、生徒の安全運転の意識と技術の向上を目指し、1996年に「二輪車競技部」を創部している。この二輪車競技部員13人も講習会に参加した。
矢部高校は交通ルールの遵守・車両整備の徹底を条件に原付通学を許可している。原付免許取得者は61人で、そのうち85%の52人が、現在原付バイクで通学をしている。
特別表彰副賞・贈呈式
講習会に先立ち、公益財団法人国際交通安全学会(IATSS)創立50周年記念式典で熊本県立矢部高等学校が特別表彰されたことから、その副賞として4台の二輪車が贈呈された。
EM1 e:贈呈式では、国際交通安全学会の橋居賢治常務理事からEM1 e:3台と400ccの「NX400教習車仕様車」1台が、矢部高校を代表して二輪車競技部部長の五所愛華さんに手渡された。あいさつした橋居常務理事は「IATSSは交通安全に関する優れた教育や活動を行っている団体を評価、表彰をしております。日本全国のいろいろな活動を調べたところ、この矢部高校の交通安全活動と教育が最も素晴らしいという結論に達しました。9月17日に東京・虎ノ門で行った創立50周年記念式典に緒方校長と五所部長をお招きし、表彰させていただきました」旨を述べた。
電動二輪車技術講習
電動二輪車技術講習会では、EM1 e:開発陣らによる講義が行われた。技術講義の項目は、「カーボンニュートラル(CN)とモビリティの電動化」「電動バイクの構造と仕組み」の2講義。
CNとモビリティの電動化では、本田技研工業、EM1 e:開発責任者の後藤香織氏による「カーボンニュートラルに向けた世界の流れ」「モビリティの電動化への取り組み」の2項目を講演した。
電動バイクの構造と仕組みでは、ホンダ・レーシング、二輪レース部開発室の内山一氏による「電動バイクの構造概要」「モーター・バッテリーのしくみ、電動バイクの特徴」「電動バイクの課題、乗って感じられること」の3項目を講演した。
「商品開発に関して、ホンダにはワイガヤという文化があり、立場に関係なくそれぞれの意見をワイワイガヤガヤ言い合います」というような、開発時のエピソードや苦労話などを交え、高校生に分かりやすく解説していた。
電動二輪車安全運転講習
午後の安全運転講習は、会場をHSR九州交通教育センターレインボー熊本(熊本県菊池郡大津町)に移動して行われた。ここは、本田技研工業熊本製作所に隣接する広大な敷地で、コース面積は約35万1000㎡。講習場所は、このうちコース全長約695mのドリームコースで行った。
バスで会場に着いた生徒たちは、ヘルメットのかぶり方、プロテクターの装着の仕方などブリーフィングの後、グループに分かれて安全運転講習を受講した。
ホンダ・インストラクターによる安全運転講習では、EM1 e:を使用。操作方法を学んだうえで、インストラクターの先導でコースを走った。初めて乗る電動バイクの低速からの力強いトルクに「ワー!早い」「静かー!」など大声を出してコースを周回していた。そのほか、普段の通学を想定して、バス停で停車中の横を通り過ぎる際の歩行者の飛び出しへの注意なども学んだ。
乗車後、免許を持っていない生徒らも一緒に、電動バイクの利点や課題だと思うことをグループに分かれてホワイトボードに書き込み、発表した。
利点は、音がしない、静か、自然に優しい、ガソリン代が浮く、加速がいい、気分がさわやかなど。課題は、静かで気付きにくい、充電時間がかかる、バッテリー持続距離が短い、値段が高い、バッテリーが重いなどが発表された。
この後、電動バイクの優れた静粛性と、静粛ゆえに他車(人)に気づかれない危険性の両面性についてインストラクターによるデモンストレーションが行われた。
生徒数十人が後ろ向きで横一列に並び、50m後方からEM1 e:が生徒たちに接近、気配に気が付いたら生徒に手を挙げさせた。その結果、直前まで接近しないと生徒たちは手を挙げなかった。
次に、同じ条件で走らせた、ガソリンエンジンスクーターや接近通報装置を取り付けた電動バイク「BENLY e:」では、スタートさせた瞬間に大多数の生徒が手を挙げた。生徒たちはこれらの気づきを通して、日頃の交通安全意識がより高まったと感じたようだ。接近通報装置はスピーカーから音を出し、車両の存在を気付かせるシステム。EM1 e:にも用途に応じてオプションで装着できるという。