安全講習会やサーキットなど攻めるときにガード類をつけて、公道を使って帰るときはガード類を外す方もいますが、唖然としてしまいます。とりわけ胸部プロテクター着用率が今なお低い現状は、残念でなりません。
6月と9月に行ったタイでは二輪車市場が賑やかですが、プロテクターに関しては絶望的。ヘルメット着用義務なのに後席のライダーはかぶっていないのが普通でした。
それを思えば日本はましという考えもできるでしょうが、クルマのシートベルト非装着は違反になりますし、ヘルメット着用も「安全は自分でつかみとる」ではなく、罰則が嫌だからという理由のお客様は、長く乗り続ける方ではないかもしれません。
整備についても気になったことがあります。法定点検で車両をバイクショップに預ける前に、各部の増し締めを自分でやりました。一箇所のみ、重要ではない部分なのですがボルトが緩んでいて、後で締めようと思ったのですが、その状態で預けてしまいました。しかし、ショップの点検終了後に確認したら、ボルトは緩んだままでした。
信頼関係こそが、楽しいバイクライフのスタート基地
ほぼ同時期に、別のバイクを専門ディーラーに預けました。法定整備点検後に「エンジンは何も問題ありません。コンピュータのデータも正常です」と担当メカニックが説明してくれたのですが、どうも腑に落ちません。
点検終了後も、アクセル開度ゼロのままクラッチ操作するとエンジン回転が過剰に上下します。発進アシストのためのわずかなエンジン回転上昇ならわかるのですが。
エンジン側のレリーズ角度を見たら、1ノッチ分だけ正規の位置ではなかったのが原因だとわかりました。
コンピュータのデータチェックは整備の一部分でしかなく、何かしらの問題点があればその根本原因を把握して、解決方法をバイクユーザーと共有するのが正しい整備のあり方です。
万が一、整備ミスがあった場合にユーザーが噛み付くケースもあるかと思いますが、普段から整備に万全を期す心構えを伝え、「ちょっとでも不具合を感じたら、すぐにお知らせください」とフレンドリーかつ真摯に、整備への取り組み姿勢を態度と言葉でお客様に伝えるべきです。
バイクショップとの信頼関係こそが、お客様の楽しいバイクライフのスタート基地になると思うからです。
バイクという面倒な乗り物に乗り続けるために、装備と整備の質を高めることがとりわけ重要です。お客様の安全と楽しさの継続を思うだけでなく、少しでも意思疎通を図る「信頼」こそ、外すことのできない最重要キーワードだと思います。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。