日本自動車殿堂では▼日本自動車殿堂・殿堂者(殿堂入り=日本における自動車産業・学術・文化などの発展に寄与し、豊かな自動車社会の構築に貢献した人々)▼同・歴史遺産車=自動車産業や自動車交通および自動車文化の発展に貢献した、歴史に残すべき自動車▼同・イヤー賞(4部門)=1年間(23年10月16日~24年10月15日)に日本市場で発表・発売されたマイナーチェンジを含まない新型乗用車の中で、最も優れた乗用車──を選定している。
授賞式は24年11月13日、例年と同じく東京都千代田区の学士会館で開催。主催者を代表して冒頭、日本自動車殿堂の藤本会長があいさつ。「100年に一度の大きなイノベーションの波が、自動車産業に来ている。ここを過剰反応しすぎず、あるいは固定観念に陥らず取り組んでいくには、基本に戻って、新しい中にもベーシックあるいは古い考え方が重要だ。今後もそういうスタンスで選考を続けていきたい」旨を述べ、日本自動車殿堂の重要性を強調した。
二輪車関係で今回殿堂者となった酒井文人氏(1924~2002年)は、全日本モーターサイクルクラブ連盟(MCFAJ)初代理事長で、八重洲出版元代表取締役社長。戦後のモーターサイクルレースの開催に携わり、二輪・四輪誌を刊行し健全なライダー・ドライバーを育成、国産メーカーの国際競争力を高める礎を築き、日本のモータリゼーション文化を高めることに多大な貢献をした偉業が、今回の受賞理由だ。
四輪車関係では▼下川浩一氏(法政大学名誉教授、東海学園大学名誉教授/1930~2016年)=自動車産業研究の道を拓き国際ネットワークを構築▼内山田竹志氏(トヨタ自動車前会長、トヨタ自動車エグゼクティブフェロー/1946年~)=世界初の量産ハイブリッド車開発と次世代モビリティを主導▼大聖泰弘氏(早稲田大学名誉教授/1946年~)=エンジン研究の道を極め国内外の新たな研究を支援▼原昌宏氏(デンソーウェーブ主席技師、福井大学客員教授、名古屋学院大学特任教授/1957年~)=日本発世界標準、QRコードの発明者──が受賞。
二輪車で歴史遺産車に選ばれたのは、1909年(明治42年)に製作され、4サイクル空冷単気筒400ccエンジンを搭載した、日本初のモーターサイクル「NS号」。車名は開発者の島津楢蔵氏(2014年日本自動車殿堂者/1888~1973年)の頭文字をとって命名。その後の量産モデルへと続く国産モーターサイクルの源流となった歴史的名車だ。
四輪車の歴史遺産車は▼トヨタ・2000GT(1967年)=トヨタが自社の技術を世に問うために、ヤマハの協力を得て開発。国際速度記録を樹立、流麗なスタイリングを持つ日本製GTカーとして世界的に高い評価を得た▼スズキ・アルト(1979年)=軽自動車の排気量が550ccへの拡大を機に、その本質をとらえ、ムダや飾りを省いた低価格車として登場。当時低迷していた軽自動車市場を復活させ、今日の軽自動車の地位を確固たるものにした▼スバル・レガシィ(1989年)=富士重工業の世界戦略車として、走りの質の向上をめざしたイノベーションから生まれ、AWD技術やステーションワゴン市場を開拓するともに、その後のスバル独自の基幹技術を確立──だった。
イヤー賞は▼日本自動車殿堂カーオブザイヤー(国産乗用車)=「トヨタ・クラウン(セダン)」および開発チーム▼同インポートカーオブザイヤー(輸入乗用車)=「ボルボ・EX30」およびインポーター▼同カーデザインオブザイヤー(国産乗用車)=「トヨタ・クラウン(スポーツ)」およびデザイングループ▼同カーテクノロジーオブザイヤー(国産乗用車)=「e-SKYACTIV R-EV:マツダ・MX-30 Rotary-EV」および開発グループ──が受賞した。