昔は天気予報など気にせず、雨でも寒い日でもツーリング三昧でした。今は単独で走る回数は減っていますが、バイクレッスンの受講生とツーリングをする時間が増えて、それはそれで楽しくてやり甲斐があります。
そういえば元GPライダーの平忠彦さんとは高速道路走行中に、原田哲也さんとはサービスエリアでバッタリ出会って、のちのトークショーの控え室ではレース以外の話で盛り上がりました。
旅はいつどこで誰とばったり会うか…。九州や北海道で知り合った方と、逆回りして再び出会う偶然もありました。地元の方とのちょっとした会話も含めて、旅では普段の生活にはない暖かい気持ちが生まれるのでしょう。そんなめぐりあいも、ツーリングの醍醐味です。
好きなように走り、好きなだけ素晴らしい景色を見る
気の合う仲間たちと走るのも楽しいですが、ひとり旅だと好きなように走ることが出来ますし、好きなだけ素晴らしい景色を見ることが出来ます。まさに自由です。
私のこだわりは夜明けと夕暮れ時です。誰もいない山の上まで走り、海岸の夜明けや夕陽を追ってツーリングしています。今も昔も変わりません。全国各地の高速道路から見える景色だけでなく、街を見下ろせる峠で「この街に友達がいたなあ、今度連絡してみよう」などと、昔の友人に思いを馳せることもしばしばです。
食事は有名店に行くこともありますが、混雑時はあえて別の店へ飛び込みます。食事は味も大事ですが、ゆったりとしてこそ本当の味。お店の主と会話が楽しめることもあるからです。ガソリンスタンド店内で休憩することも多いです。特に寒い時と暑い時。オススメの店や道の情報を尋ねます。
ツーリングに限らない話ですが、私は自分の車線の中央のみ走るCKM(センター・キープ・メソッド)を厳守しています。アウト・イン・アウトなどのレース的なラインで走行すると、走りそのものを楽しみすぎて走行ペースが次第に上がり、安全マージンがどんどん減る傾向にあります。CKMで自分を制御しているのです。
一人で走っていると、自分のこだわりや求めていることが明確になる気がします。最近、他の誰かに役立つことを探しながらバイクを走らせていることが多くなりました。それは自他非分離の境地なのでしょうか。
80歳過ぎでも元気ビンビンのライダーを目標に、いつまでも安全・元気に走り続けられるノウハウを探求し、次世代に伝えていく気持ちは不変です。自分を再確認するためにひとり旅を続けているのかもしれません。ひとりでツーリングすると自分が見えてきます。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。