オンロード、オフロード、スーパーモタード、トライアルにフラットトラック……。あらゆる二輪車競技をサポートし、その知見を基に高品質サスペンションサービスを提供する㈲テクニクス。取り引きのある二輪車販売店は約2500店にも上るという。なおかつモトクロスコースの運営も手掛け、昨年にはレンタルバイク事業にも乗り出した。そのバイタリティの源泉は何か。代表・井上浩伸氏のインタビューを前後編にわたりお送りする。
画像: テクニクス/ナイトロンジャパンの井上代表取締役

テクニクス/ナイトロンジャパンの井上代表取締役

━━㈲テクニクスと、㈱ナイトロンジャパンという二つの会社を経営されています。

「サスペンションサービス事業について言えば、テクニクスがサービス部門、つまりサスペンションのメンテナンスやモディファイを担っています。ナイトロンジャパンは、英国Nitron Racing Systemsの日本国内正規輸入販売代理店という役割で、販売店様向けに卸売を行っています」

━━いま埼玉県春日部の本社に伺っていますが、「想像以上にたくさんバイクがあるな」という印象です。

「ははは。お客様からお預かりしている車両は10台くらいかなと。表に展示しているのは弊社モト・テクニクス事業部のレンタル車両。他にテスト車両や社員の所有車もありますから、確かにたくさんありますね」

━━テクニクスとしてはレンタルバイクを始めたのは最近だとか。

「そう、2024年の春から。お貸し出ししているのはテクニクスのデモ車両なんです。我々のモディファイにより『純正のワンランク上の乗り心地』としたバイクや、純正とは違ったコンセプトで味付けしたバイク、あるいはオフロード走行の快適性を高めた仕様であるとか。そうしたバイクの楽しさや安全性を体感していただくため、実際に1日しっかり乗れるようにと。それで気に入っていただければ同じ仕様の車両を仕上げることはもちろん、場合によってはレンタル車両をそのままご購入いただくことも可能ですよ」

画像: スペシャルな足回りを得たデモ車両のレンタルおよび販売も開始した

スペシャルな足回りを得たデモ車両のレンタルおよび販売も開始した

━━テクニクスの技術を「お試し」できるというわけですね。全てナイトロンのショックを装着しているのでしょうか。

「もちろんナイトロン装着車もありますが、自社ブランドを含め様々な製品を装着した車両があります。テクニクスはショーワやカヤバといった国内メーカーだけでなく、海外メーカーにも強く、特にウィルバース、ビチューボでは国内唯一のメーカー認定のサービスセンターでもあるので、型にはまらない多様な対応が可能なのです」

━━自社ブランドもあるのですね。

「日々のメンテナンスやモディファイを通じて培ったノウハウにより、様々なオリジナル製品をリリースしています。サスペンションに限らず、ホイールやブレーキキットなども含め足回り全体で車体のセットアップを目指しています」

━━そうして商品ラインアップが幅広くなり、お取引店舗も約2500店に。案件の数で言うと、月間何件ほどでしょう。

「そうですね……。サービス提供でいうと、月間300件くらいです」

━━そんなに膨大な件数を。

「今後はサスペンションだけでなく、まとめて整備や車検も請け負うことができるよう準備を進めています」

画像: プロの処理を待つサスペンションが整然と居並ぶ

プロの処理を待つサスペンションが整然と居並ぶ

━━この上さらに手を広げるのですか。

「エンジンを除く車体周りは一通り整備できるようにと。例えばサスペンションのモディファイを依頼していただいても、それ以前にタイヤであったりブレーキであったり、他のメンテナンスを必要とするケースが多々あるんです。とはいえ『他にここを(二輪車販売店に)直してもらってまた来てください』と言っても、販売店も皆さん忙しく、すぐには対応してもらえないことも多くて、お客様も二度手間になりますし」

━━ならばワンストップで請け負ってしまおうと。

「はい。車検を通すついでにサンペンションを改善しよう、といったこともできるように」

━━ユーザーには非常に便利ですね。そうしたサービスを現在、何名体制で回しているのですか。

「通常は6名かな。ただ、整備士有資格者は現在17名おり、ほぼ全員がサービス部で経験を積んでいますので、忙しさに応じて人員配置を調整して対応しています。また人材採用にも力を入れており、整備、業界未経験者も多数採用していますよ。『技術を身に着けたい』という気合いと根性を持った若者であればウェルカムです。『そんな(厳しい)こと言っていたら人が来ませんよ』と、たしなめられますが」

━━ははは。しかし実際に気合いと根性は必須かなと感じます。仕事量は多いでしょうし。

「それだけに、ただ厳しいだけでなく環境面でも世間一般の会社並みにしようと」

━━重大なテーマです。賃金や労働環境を良くしていく方策として、何があるでしょう。

「やはり頑張って価格転嫁することです。商品にせよ、サービスにせよ。テクニクスの場合は売上の半分以上をサービスが占めているのですが、サービスというのは1日に提供できる量が限られています。そこで付加価値が問われるのです」

画像: 北海道・釧路店を拠点に、レンタル車両で行く林道ツーリングツアーも実施

北海道・釧路店を拠点に、レンタル車両で行く林道ツーリングツアーも実施

━━限られた時間の中で、いかに価値あるサービスを提供するか。それは例えばどのような。

「サスペンションのメンテナンスを請け負った際、お客様の使い方に合ったオプションのサービスを提案するとか。それがお客様の満足度を上げるかどうかです。納得して満足していただければ、サービスの請求額が倍増することもある。その結果、利益が上がればスタッフに還元できますから」

━━ユーザーとすれば車両を何日間預けたから幾ら、という話ではなく愛車の乗り心地や安心感、パフォーマンスが向上するかどうかが大事ですものね。サービス品質や提案力の向上ということがカギになってくると、情報共有やノウハウの伝承が非常に重要かと思われます。その点ではどのような取り組みを。

「サービスミーティングを毎週1回、開発ミーティングを2週に1回開いています。そこで技術的なことを共有すると共に、決定事項などは情報共有ツールに残しています。休暇を取っているなどでミーティングに参加できていないスタッフもいますのでね」

━━組織として成長するという志が伝わってきます。

「最近はそうなってきたかもしれません。以前は何でもかんでも私を通して進めていましたが」

━━そうでしたか。後編はテクニクス社の歩みから伺います。

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