たとえば私のルーティーン。走り出す前に3秒かけて鼻で息を吸って、7秒かけて口でゆっくりと息を吐きます。息を吸い込む時にハンドルグリップをガチガチに握って、息を吐く時に手のひらをユルユルに。最低でも5分5kmごとに1回やります。バイク版10秒マインドフルネスです。
いつの間にか、ハンドルグリップは強く握り込んでしまいます。手のひらの圧力は、脳へのプレッシャーとなります。時間経過・距離増大とともに、手のひら&脳へのプレッシャーを低減させることが安全と快適のキモ。バイク版10秒マインドフルネスは、低疲労にも直結します。ゆっくり走ってもこれ抜きでは安全運転とは言えません。
次の注意点は事故対策。交通事故の70%近くが交差点で発生し、その交差点事故でもバイク直進中と対向右折車、つまり右直事故が70%です。70%×70%=49%。つまり全事故の5割近くが交差点で起きています。
お客様へ効果的なライディングアドバイスを
お客様の事故は、販売店にとっても何ひとつ良いことはないのですが、販売店スタッフは事故回避の模範であるべきです。
具体的には交差点直進時に前後ブレーキを早めに準備。ブレーキランプが点灯したまま交差点を通過するぐらいの用心深さが必要です。
早めのブレーキ準備に勝る安全は存在しません。販売店のスタッフは全員その道のプロ。安全をセットでバイクをお客様に届けるために、欠くことのできない重要案件です。
特に朝のラッシュ時や夕暮れ時、夜間。そして雨になるとバイクはますます見落とされやすいという現実。早めのわずかなブレーキ入力は、雨や砂利など滑りやすい路面への対処や、サーキットなどフルバンク時のクレバーな操作にも直結。それはそのままお客様への効果的なライディングアドバイスにもなります。
ソフトなハンドルグリップ入力や繊細なブレーキレバー入力は、たとえばフロントに限定するとフロントディスクの歪みなど誰よりも早く発見できますし、ステムベアリングの摩耗状態がより繊細に感知できるのです。
赤信号停止ひとつでも漠然とやりません。どの場所を、どのように停止するか。たとえば停止時の足着きを右か左足か、完全停止時か停止後の着地か。これが余裕の目安となり、傾斜路面でのお客様の安全安心に貢献できるスキルになります。
普段の移動を単なる移動にしない。ストリート走行は安全快適な走りのヒントを見つけるまたとない学習の場と考えたいですね。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。
