昨今の大型国産バイクは、メーカー系列の大型店舗でなければ買えないという事態になって久しいです。大型店舗が近所にないため大型を諦めて小型バイクや中古バイクを選択する例も耳にします。
ライダー人口や経済動向を見据えた各バイクメーカーの戦略も気になりますが、その良否・是非をここで問いたいのではありません。単純に、大型店と小型店・零細店にできることの違いは果たしてあるのか、という点です。
バイクはコンビニ等で食料品を手に入れることとはわけが違う特別なものだと強く思っているのは、販売店よりむしろお客様かもしれません。
大型店舗ではスタッフを多くかかえ、効率の良い販売を是とするしかないでしょうが、それでも自分のわがままを聞いてくれるお店も確かにあります。小規模店だから小回りが効くかと思えば、案外そうでなかったりもします。
大型店舗といってもメーカー系列によるお店だけでなく、独立店舗による支店数増大や店舗そのものの大型化など多岐に渡ります。大型店、小型店のいずれにしても、お客様のわがままにきめ細かに対応すべき時代にシフトしているんだと思います。
たとえば前後サスペンションのグレードアップはカスタムの優先度が高いジャンルのひとつですが、セットアップしたら終わりではなく、セッティングの基本をアドバイスし、定期的なメンテナンスこそが良好なコスパにつながるなどのアドバイスが重要になります。
そうしてお客様と仲良くなった販売スタッフが他の店舗に移動して、関係が振り出しに戻る場合もあります。でも、どんな作業をお客様と一緒にやったのか、次のスタッフへの引き継ぎが上手くできれば、絆はむしろ強くなるかもしれません。
結局、販売店の規模の問題ではなく、お客様との密度の問題というわけです。
専門店ならではのきめ細かさがあれば
そしてもうひとつ。足回りやその他のパーツ交換で、ショップ側は全知全能でなくてもよいのです。一緒に課題を解決・達成すればよいのです。バイクの洗車でも困っているお客様はいます。無料でも有料でも、洗い方ひとつから光沢を出すまでの手順を一緒にやればよいし、高品質なノウハウを提供すればよいのです。
販売店の規模は関係なく、お客様が求めるものを把握・提供する。専門店ならではのきめ細かさがそこにあれば、相応の代金をいただくことができると思います。販売や修理だけでなく、それ以外の売り方も二輪車業界にはまだたくさん残っていると思います。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。


