初日の記者会見では、創業者ウィリアム・ダビッドソン氏のひ孫であるビル・ダビッドソン氏らVP(ヴァイスプレジデント)陣が記者会見を開き、2020年モデルとして電動モデル「ライブワイヤー」を発売することを発表。「ハーレーダビッドソンの幅広い性能と競争力を最大化することが期待できる。ロイヤルライダーの皆様はもちろん、まだライディングの喜びを考えたこともない未来のライダーの皆様にも、これらの〝革命〟を通じ新たな自由を提供できれば幸いだ」と述べた。
設計はウィスコンシンの製品開発センターで行われペンシルベニア州ヨークの工場で製造されることもわかった。来年夏に北米およびヨーロッパの一部を皮切りに販売が開始される予定で、日本もそれに続くだろう。
ライブワイヤーはイベント期間中に実車を展示し、さらに最終日のパレードにて走行するシーンも披露。製品化に向け、開発が順調であることをアピールした。
この創業祝賀イベントは、世界中に100万人の会員を有するHOG(ハーレーダビッドソン・オーナーズ・グループ)の公式イベントであり、HOGが創立された1988年から行われている。
公式会場となっているのは、街の中心に近いハーレーダビッドソンミュージアムをはじめ、湖畔の大きな公園や地元にある7つのディーラー、そして本社や見学可能な工場、レース会場など多岐にわたり、アリーナで開催されたインドアでのフラットラックレースを除きすべて入場無料。試乗会や各種アトラクション、ロックコンサートなど様々なプログラムがHOG会員でなくても楽しめる。
HOGの公式ツアーもあり、これに参加した場合はアメリカ四隅にある4都市、サンディエゴ(カリフォルニア州)、シアトル(ワシントン州)、ポートランド(メイン州)、フォートローダーデール(フロリダ州)を出発し、6日~9日間を要してミルウォーキーに辿り着く。
街は全米から集まるバイクであふれかえるが、道路や歩道のデッドスペース、公園の一角など交通の妨げにならないところを二輪車の駐車場にして対応する。地元警察が交通誘導し、大きな混乱が起きたことはこれまでもない。地元への経済効果も高く、公式会場でなくとも商店や宿泊施設など至るところに「ウェルカムライダース」と歓迎のサインが掲げられ、街が活気づく。旅行会社によると、期間中のホテルは料金が倍以上に上がっても予約でいっぱいだという。飲食店の賑わいも夜遅くまで続く。
レースプログラムやカスタムショーが連日開催され、大物ミュージシャンによるロックコンサートをメインプログラムとした5年前に比べると、バイクメーカーらしさが際立つ内容であった。黎明期に盛んに行われていたビーチレースやヒルクライムをはじめ、ハーレーダビッドソンのファクトリーチームが参戦するフラットトラックレースやドラッグレースもエキシビションとして開催。カリフォルニアで人気のカスタムバイクショー「BORN-FREE」を誘致し、ビンテージモデルやハードなカスタム車も積極的に展示するなど、コアなユーザーも満足できる工夫がみられる。ほとんどが高年式車だが、旧いハーレーダビッドソンも希にみかけたのはその影響かもしれない。
こういった姿勢は最近のハーレーダビッドソンジャパンにもみられ、毎年5月開催の公式イベント「ブルースカイヘブン」でも、会場となる富士スピードウェイの本コースをハーレーダビッドソンのレーシングマシンたちに解放する時間を設けたり、旧車の展示ブースを大きく構えるなどするほか、国内最大級のカスタムショーである12月の「横浜ホットロッドショー」(ムーンアイズ主催)にも出展し、熱狂的ファンの関心を取り戻そうという狙いが感じられる。
ミルウォーキーでの創業祝賀イベントは、街のメインストリートを閉鎖して行う6000台規模のパレードで締めくくられ、沿道はたくさんの人で賑わう。和やかなムードに包まれるなか、声援を受けて駆け抜けるライダーは子どもたちにとっては憧れの対象となり、近い将来に新規ユーザーを生み出す効果ももたらしている。
そして日本のお祭りのように恒例行事として街に定着しており、苦情や反対意見が出ないのは、地元住民のハーレーダビッドソンに対する敬意の表れでしかない。規模や盛況ぶりに圧倒されると同時に、日本でもこうしたバイクイベントが開催されないかと羨ましくなるのだった。
(文=青木タカオ)
紙面掲載日:2018年9月28日