第1回(13年/in鈴鹿)▽第2回(14年/in浜松)第3回(15年/in熊本)▽第4回(16年/in兵庫・神戸)▽第5回(17年/in群馬・前橋)と行われてきたBLF。今年の第6回は初の東北開催となった。岩手県一関市内には、全日本モトクロス選手権が開かれる藤沢スポーツランドやヘルメットメーカーSHOEIの工場があることに加え、岩手県や一関市が東日本大震災からの復興と地域振興の一環で歓迎してくれたことなどにより、この地での開催が決まった。
BLF開催に先立ち、開催地となった岩手県と一関市による観光PRが行われ一関市からは一関市・東山支所産業経済課の菅原彰課長が登壇し、スライドなどを使って同市内にある藤沢スポーツランドやSHOEIの工場などを紹介したほか、同市の名所などを紹介。続いて岩手県の観光PR隊「岩手まるごとおもてなし隊」のサクラ凛さんとミラクル龍子ちゃんがケロ平(岩手県公認キャラクター)を連れて登壇し、名所やPRソングを披露。
この後に行われた開会あいさつでは、BLF主催者を代表して経済産業省製造産業局自動車課の河野太志課長、続いて開催自治体を代表して岩手県の保和衛副知事があいさつ、そして達増拓也知事の歓迎メッセージを代読した。
開会あいさつ後にはまず経産省製造産業局自動車課の内藤貴浩課長補佐が、恒例の「二輪車産業政策ロードマップ」進捗状況説明を行った。今回は9つある政策課題(海外市場政策4課題・国内市場政策5課題)のうち、国内市場対策である▽安全・安心な二輪車利用環境の醸成▽社会との共生実現▽社会基盤の整備▽免許制度の見直し▽快適・楽しさの訴求──の5課題について、取り組みの実績について説明を行い二輪車環境改善に向けた取り組みが説明された(別掲)。
続いて二輪専門誌の編集長らをゲストに招き、パネルディスカッションや対談が展開。パネルディスカッションは①素晴らしいバイク文化の創造②バイクユーザーの未来への導き方──の2部制で行われた。
「素晴らしいバイク文化の創造」をテーマにしたトークショーでは、岩手県盛岡市出身の菅生雅文氏(「アウトライダー」編集長)と斎藤純氏(小説家・岩手県立神の丘美術館芸術監督)、一関市ライダーの伊勢ひかる氏(カメラマン・農家)、戸舘弘幸氏(岩手県商工労働観光部ものづくり部長)、隠岐直広氏(日本モーターサイクルスポーツ協会事務局長)をゲストに迎え、▽二輪ライダーが東北復興を支援する意義▽モーターサイクルスポーツが地域復興に果たす役割──について、議論を交わした。
菅生氏は東日本大震災後のイベント開催などの活動事例などを踏まえた上で、ライダーに「被災地へどんどん訪れてほしい」。また、斎藤氏は復興の状況などを説明した上で「これだけ復興していることを広めてほしい」と訴えた。
戸舘氏は「被災地のインフラはほぼ整ってきている。皆さんで現地に来てもらうことが力になる」。伊勢氏は「一関市にモーターサイクルスポーツができる場所があるのはラッキーだ。もう少し岩手の皆さんにも分かるよう広めてほしい」。隠岐氏は「皆でレースをもっと盛り上げていきたい」と語った。
「バイクユーザーの未来への導き方」をテーマにしたトークショーでは、元レーシングライダー宮城光氏をMCに、北村明弘氏(クレタ社長)、原田英里氏(ガールズバイカー編集長)、松下尚司氏(オートバイ・RIDE編集長)をゲストに迎えた。▽最近のバイクユーザーの変化▽その変化に対する対策▽若者、女性エントリー拡大のアイデア▽バイクが魅力ある存在であり続けるには▽ロードマップ施策の推進には何が必要か▽この機会に二輪車業界に伝えたいこと──について、議論を交わした。
松下氏は「私は周りの人が乗っていて憧れ、バイクに乗るようになった。皆さんもぜひバイクに乗ることの夢を語ってほしい」。原田氏は「将来的には女性が乗ることが当たり前になるようバイクの輪を広げていきたい」。北村氏は、ライダーによる海岸清掃活動ラブ・ジ・アースを実施しており、「一人ひとりの力が小さくても、皆が集まればできる」などと、一致団結の意義の大きさを述べた。
大人向けのライディングレッスンを行っている宮城氏は「高齢者になりようやく時間ができて二輪免許を取る人がいる。私は会ったライダーに『100歳まで乗りましょう』と言っている」と高齢でもバイクを楽しめる点を強調した。
トーク対談は、「国内バイク市場の将来展望を語る」をテーマに、合田英了氏(JMR生活総合研究所取締役)、埜邑博道氏(枻出版取締役)との2人により展開。「自工会2017年度二輪車市場動向調査」の結果をもとに、▽新車購入ユーザーの特性▽新規購入者の変化▽二輪車の潜在層▽二輪車潜在需要層の情報・サービス期待──についてトークを展開。
ユーザーの高齢化について、埜邑氏は「バイクは高齢者にとっても楽しむための乗り物だ。若者層に比重を置きすぎているマーケティングを少し変えてもいいのではないか」。女性ライダーについては「一旦乗ると加速度的に乗るようになる。女性ライダーに乗ってもらうためのサポートが必要」などと述べた。
会場では、聴講に訪れた出席者との質疑応答の時間も設けられ、活発な意見交換が行われた。
パネルディスカッション、トーク対談終了後には日本自動車工業会二輪車特別委員会の日髙祥博委員長が総評を行い「バイクはこんなに良い乗り物ということをメッセージで伝えていくことが大事。ロードマップも着実に前進している。官民挙げたBLFの取り組みが一歩一歩前に進んでいくことが重要で、これからも継続的に努力を続け、市場100万台に向け頑張っていきたい」と述べた。
閉会のあいさつを行った全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の大村直幸会長は「今ある販売台数を減らさぬよう100万台市場に近づけていきたい」などと述べた。
次回は山梨県で
この日、次回開催が山梨県になったことが発表。会場では山梨県観光部観光プロモーション課の落合直樹課長があいさつに立ち、「来年は甲府が開府から500年になる。本年のように実りあるフォーラムを期待している」と述べた。
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【BLF開催実行委員会メンバー】経済産業省▽日本自動車工業会(自工会)▽全国オートバイ協同組合連合会(AJ)▽日本二輪車普及安全協会(日本二普協)▽日本自動車輸入組合(JAIA)▽日本自動車部品工業会(部工会)▽日本二輪車オークション協会(JABA)▽全国二輪車用品連合会(JMCA)▽中古二輪自動車流通協会(UMDA)▽三重県▽鈴鹿市▽静岡県▽浜松市▽磐田市▽熊本県【共同開催】岩手県、一関市
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◆「二輪車産業政策ロードマップ」
BLFでの議論を受けて2014年5月、二輪車関係団体および地方自治体は二輪車産業の成長戦略として「二輪車産業政策ロードマップ」を策定。2020年の目標イメージとして①世界のバイクの2台に1台をジャパンブランドに②国内市場販売100万台③利用者のマナー向上──を掲げている。政策課題として①新興国:通商産業政策への取り組み②新興国:知的財産権の保護③交通安全の取り組み④国際基準調和の推進(以上「海外市場対策」)
⑤安全・安心な二輪車利用環境の醸成⑥社会との共生実現⑦社会基盤の整備⑧免許制度の見直し⑨快適・楽しさの訴求(以上「国内市場対策」)──の9課題・14実施施策を掲げている。
◆ロードマップ進捗状況説明
(1)安全・安心な二輪車の醸成
▼胸部プロテクター着用推奨&ヘルメット適正着用の推進▼ジャパンライダーズ宣言活動▼グッドライダーミーティング(Gミーティング)の開催▼高校生安全運転講習会▼高校生への二輪車安全運転教育の現状と課題や好事例をとりまとめ、関係機関への啓発活動を実施
(2)社会との共生実現
▼不正改造の撲滅▼災害発生時におけるバイクの特特性を活かした活動▼三重県南部10市町でツーリングマップを作成しライダー誘致で地域活性化
(3)社会基盤の整備
▼全国バイク駐車場案内サイト▼前記サイトで駐車場設置リクエストを募集し要望内容を自治体・民間事業者に提供▼国土交通省の全国駐車場政策担当者会議に出席し、駐車場好事例等を発信▼二輪車の高速道路料金の車種区分を「軽自動車等」から独立させ適正料金化を要望▼ETC二輪車ツーリングプランの拡充▼ETC二輪車ツーリングプランにBLFin岩手・一関開催を記念した期間限定特別コース設定
(4)免許制度の見直し
▼AT小型限定普通二輪免許の技能教習時間見直し▼警察庁が次世代二輪シミュレーターで教習を行うことができるよう型式基準を改正(16年10月)
(5)快適・楽しさの訴求
▼バイクの楽しさを体感できるイベントを各地で開催
紙面掲載日:2018年9月21日