画像: 中川輪業 中川満徳代表/「うちの主力は50cc」
画像: 県道沿いの路面店となる店舗外観

県道沿いの路面店となる店舗外観

二輪車の国内における販売台数の減少は年々進む傾向にあり、歯止めがきかない現状といえる。しかし、内訳をみてみると、250㏄のスポーツモデルや原付二種などで伸びている傾向も時折みられ、車両のカテゴリーによっては増加もあるようだ。しかしなんといっても大きく台数を減らしているのは原付一種、いわゆる50ccだ。

18年には、オートマチック車限定で125cc以下のバイクに乗ることができる「AT小型限定普通二輪免許」の取得容易化などが行われ、二段階右折がない、二人乗りが可能、制限速度も50ccの30km/hではないなど、原付一種での不便な面を同様の車格と扱いやすさながらクリアしている原付二種をアピールする向きも業界内にみられる。その反面、原付一種、いわゆる50ccの不利な面が逆に浮き彫りにされている感も否めず、世界的にみて希少な排気量といえる50ccから、他の排気量へ変換していこうという流れがあるようにも感じられる。

しかし、その「50ccこそがうちの主力」と原付一種の販売を主に地域に根差した安定経営を続ける販売店がある。熊本県熊本市の中川輪業だ。

代表の中川満徳さんは自転車店からスタートした同店の3代目で、このほど創業から100年を迎えたという大変な歴史を持つ販売店だ。中川さんは現在、AJ熊本の理事長も務めている。

「今どき50ccなんか売れないと言っているお店もありますが、うちは50ccが8割で、月に平均10台ほど新車が出る。ほとんどが代替えで、長い付き合いのお客さんが多いです。先を見据えて250ccとかも置いてはいますが、売れて行くのは50ccがほとんど」と中川さんは語る。

地域の人々の生活の足として「50ccに乗る人はまだまだ多い。とくに地方では、まだまだたくさんいると思う」といい、取材当日入荷したというベージュのホンダ・タクト3台(タクト・ベーシック・スペシャル、ハーベストベージュ)はすでに売約済みであった。ホンダのタクトは人気があるという。

画像: 主力の50ccモデルが並ぶ店内

主力の50ccモデルが並ぶ店内

「当たり前のことを普通に丁寧にやっていく。お店をきれいにして、あそこでバイク屋さんやってるなというのを長年続けていく。他店で買われた車両の修理も受けるし、在庫を店いっぱい並べてアピールしています。」という中川さん、「(先代の)親父がやっているのを見ていて、自然と自分もやろうと思った。私はバイクそのものよりも商売のほうが好きかも」とも話す。

50㏄の車両を購入するお客さんの特徴として「あまりマニアックなお客さんがいない。バイクに触るどころか、機械のことなどにも詳しくない人がほとんど。タイヤ交換やオイル交換、バッテリー交換などのアフターメンテも任せてくれるお客さんが多い」という。また「元々が自転車屋だったので、いまでも自転車の修理などもやっている。自転車修理がきっかけで、バイクを買ってくれた人もいる」そうだ。

現状の交通環境における50ccは、都市部などでは厳しい面もあるといえる。しかし、普通免許の付帯で乗れる唯一の二輪車の排気量である50㏄は、場所によっては、まだまだ生活の手軽な足としての需要もあるようだ。

趣味性の高さや非日常性などが魅力として取り上げられることの多い二輪車であるが、「地域に根差した生活の足」としての二輪車の捕らえられ方、生活財としての二輪車をアピールする動きは業界には少ないように思われる。スーパーカブの世界的なヒットは、そのコンセプトが「人の役にたつ乗り物」だったことも小さくないはずだ。「非日常」でなく、毎日の生活に入り込める「日常」の二輪車というのも、業界活性化には一つの着眼点といえるかもしれない。

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▼株式会社なかりん 中川輪業
熊本県熊本市北区池田3-1-72(℡096-352-0650)▽営業時間9時~19時▽定休日=日曜日

◆中川満徳さんプロフィール
株式会社なかりん 中川輪業代表取締役。1967年熊本生まれ。地元の工業高校卒業後、ホンダ学園関西校を経て20歳から現職。熊本で地震があった2016年よりAJ熊本の理事長も勤める

伝統ある中川輪業の3代目の中川満徳さん

紙面掲載日:2019年3月15日

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