純正部品の供給期間の長さに惚れて乗っているバイクの1台が、BMWです。空冷水平対向2気筒エンジンの「R80」は1986年式ですから、リード80SSと同じ31年経過しています。シャフトドライブのためアクセルを開けると車体が右に傾く癖がありますが、味のある楽しいバイクです。

シンプルな構造で、タペット調整もキャブレターの分解も、ガソリンタンクを外すことなくそのままで整備ができます。最近はやや欠品もありますが、ほとんどの純正部品がいまだに手に入るので安心して乗り続けられます。つい先日も、スピード・タコメーターのラバー製バイザーが硬化しましたが、注文することができました。モノづくりの考え方が、日本とドイツでは違うのではないでしょうか。

部品が手に入らず、泣く泣く手放してしまったバイクもありました。ヤマハが1982年に発売した「XJ750D」です。国内市場初となるフルカウルを採用したモデルで、電子制御の燃料噴射システムなどエレクトロニクス技術の粋が盛り込まれていました。中古で譲り受けたXJ750Dは、時々エンジンが始動しないことがありました。イグニッションキーをオンにすると確か、燃料噴射システムの燃料ポンプが作動する音がします。この音がしない時は当然エンジンがかかりません。

出かけた先でエンジンが始動せず、家の近くからバイクを押して帰ったこともありました。燃料ポンプを分解すると、内部のローターにわずかな傷があり、これが原因か?と思い砥石で研磨して組み立て直すとエンジンは始動するので、このまま乗り続けました。

この状態で友人と軽井沢にツーリングに行き、帰りに碓氷峠バイパスを降りてきて立ち寄ったレストランで食事をしました。食事を終えてバイクにまたがると、ご想像のとおりエンジンは始動しません。レストランのマスターにお願いして、後日引き取りに来ると約束し、友人のバイクに2人乗りして帰宅。1週間後、仕事を終えてから友人と一緒にパワーリフトゲート付きのトラックをレンタルし、碓氷バイパス手前のレストランに向かいました。

到着したのは夜の10時過ぎ。バイクをトラックに積み込もうとしましたが、パワーリフトゲートの幅が短くて、バイクを載せられません。途方に暮れているとき、何の気なしにセルスターターボタンを押すと、エンジンが始動したのです。助かったー!と思った次の瞬間、ヘルメットを持ってきていないのに気付きました。天国から地獄へ急降下…。夜中の11時を回り思い悩んだ末、レストランのマスターにカブのヘルメットをお借りしました。そのヘルメットでは高速道路は危ないので、一般道路で深夜の120キロメートルの道のりを無事に帰ることができました。

話が道にそれましたが、後日ディーラーに燃料ポンプを注文に行きました。生産終了後かなり年数が経過しているということで、メーカーに在庫部品はありません。何か方法はないかと調べていると、日産自動車のブルーバードの燃料ポンプとほぼ同じだという情報を聞きつけ、取り寄せました。燃料ホースの取り付け部などは微妙に違うので、XJ750Dの一部を再利用、加工して装着。見事にエンジンは始動しました。

これで安心して後日、埼玉県の飯能へツーリング。お約束通り、レストランで食事後にエンジン不動。悪戦苦闘して1時間後、たまたまエンジンがかかり、帰宅することができました。しかし長く大切にバイクに乗ろうという心が折れ、廃車することにしたのです。

今になって思うと、燃料ポンプが故障の原因だったのでしょうか。他の電気系統との複合的な不具合だったのかもしれません。

画像: 磨きこまれた「BMW R80」はオーリンズのサスペンションで峠も楽しい。バックミラーはショートタイプのGS用、ブレーキホースはステンメッシュに交換。

磨きこまれた「BMW R80」はオーリンズのサスペンションで峠も楽しい。バックミラーはショートタイプのGS用、ブレーキホースはステンメッシュに交換。

画像: ヤマハXJ750Dの赤/シルバーのカラーリングを、シートラベルを使って黒/シルバーのシックなイメージに変更。シート後部はラクダのコブのような小物入れに改造。

ヤマハXJ750Dの赤/シルバーのカラーリングを、シートラベルを使って黒/シルバーのシックなイメージに変更。シート後部はラクダのコブのような小物入れに改造。

二輪車新聞編集委員 怒谷彰久

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