このゴールドウイングのプレス向け試乗会が静岡県日本平で開催され、ようやく体感することができました。
今回試乗用に用意されたのはゴールドウイングツアーの「デュアルクラッチトランスミッション(DCT)エアバッグモデル」。いわゆるシリーズ最上級の330万円を超えるモデルです(しかも、これが一番受注数が多いらしい)。
スマートキーシステムの採用により、鍵穴などはなく、ライダーがスマートキーを携帯して近づき、スイッチをひねればバイクは目覚めます。トップケース、サイドケースには小さなボタンがあり、それを押すことでロックが解除され開けることができます。ヘルメット二つが入ってしまうトップボックスに筆者はカメラバッグと、花粉症であるためティッシュボックスも入れさせてもらいました。
走り出す前にはブルートゥース機能を用いて、自身のスマートフォンと接続すると様々な機能が使えるのですが、スマホの設定画面で「HondaGoldwing」と出てきて、ペアリングが成功したときは、車両と絆が深まったような気がして、オーナーにはうれしい機能なんではないかと感じました。
今回はヘルメットに取り付けるインカムも貸し出され、インカム同士の会話や電話もできてしまいます。試しに電話をかけてもらうと、ゴールドウイングの左グリップのボタンを押すだけで電話に出られました。オーディオやグリップ/シートヒーター(前後席)、ETC、アイドリングストップなど最近の四輪車のような機能が満載のゴールドウイング。
しかし、二輪車である以上、足でバイクを支え、起こしてから発進となります。いくら軽量化(前モデル比40kg以上!)されたとはいえ、車両重量383kgは起こしてみると結構ぐっとくる車重を感じます。
でも、DCTのDモードに入れ、アクセルをひねれば簡単に走り出します。ごく低速からも、つながりはスムーズで、あの巨体が右手の操作だけで自在に走るのは非常に快適かつ楽しいものです。水平対向6気筒1800ccの太いトルクを、優しく丁寧に使わせてくれます。右手の人差し指のところにモード切替スイッチがありますが、走行中に指一本で簡単に切り替えができ、これを意味なく変えているだけでもその変化が楽しく、特にスポーツモードは結構エンジン回転を引っ張る形になりエンジンブレーキも効き、扱いやすい車体とあいまって、高級外車のような排気音を奏でる水平対向6気筒でスポーツする感じが楽しい!
相当なペースで走れる能力が顔を出すのが頼もしいというか、「こんなこともできるのか」と感じる一方で、後ろのトップボックスにはティッシュが入ってるんだっけと思い出すと、それもまた、楽しい。そしてインカムからはラジオが流れている。この状態のまま電話もできるのかと思うと、また楽しいし、今日はカメラカーとはぐれても、何とかなるなと非常に安心したのでした。
ただ、懸案だったのが撮影中に訪れるUターンの場面。正直、この車格ではよちよち両足出して踏ん張って切り返していくしかないと思っていましたが、新採用の微速前後進機能(ウォーキングスピードモード)により、左のスイッチだけで前後進を操作、助かりました。下がってくれるバイクって本当にありがたく、そして楽しい。
新採用のダブルウイッシュボーンサスペンションは、絶えず凄く細かく動いているのが、ハンドルとサスペンションを繋ぐリンクがメーター下の左右から一部見えて、乗り心地の良さを保つ仕事を必死にしている感じがしました。
車体の安定性は非常に高く、乗り心地の良さや安心感に繋がっていると思われ、二人乗りをしても二人乗りを感じないぐらい安定しています。例えは非常に安いですが、普段のタクシーでなく、たまに高級車の個人タクシーに乗ったときの「お、違う!」って思う感じですかねぇ。
標準装備の車載器によりETCレーンからすいっと入っていける高速道路は、やはり本領発揮。電動のスクリーンを上下させて防風効果を変化させられるのですが、快適なのは当然ですが、電動でその位置を走行中にいじれるのも楽しい。無駄にスクリーンを下げて風を浴びてから、また上げてみたりしました。
エンジンは当然パワフルだし、DCTで操作簡潔かつスムーズで楽しい。とにかく楽しいゴールドウイング。これまでのモデルもすごいなぁと思っていました。特にエンジン。高級外車みたいな音がして、パワーであの大きい車体をドカンとひっぱって行く感じがたまりませんでしたが、やはり重かったり、取り回しがつらいところもあり、「楽しいエンジンだから仕方ないのかな」と思っていましたが、今回のモデルはそれが大幅に軽減され、電子制御やDCTなどでさらに多くの快適性と楽しみを増やしたモデルに進化していると感じられました。(つづく)
二輪車新聞記者 猪首俊幸 (写真:南孝幸)