先ごろ「二輪車産業政策ロードマップの目指す姿」というリポートが出され拝見した。その中で2020年の国内販売100万台を目指すと提言された。昨年度の実販台数の約3倍である。「四輪免許取得者に自動的に125ccの免許を付与する」「三ない運動を全面的に廃止する」などの具体策も提案されている。
しかし、このような行政的手法を駆使するだけでは実現はおぼつかないと筆者は考える。現状の場合、メーカー・販売店のあり方が、より大きな要因であると考えるからだ。バイクの社会的なイメージの向上にはどのような販売環境で売られているかが大きなポイントとなる。全国にあまたあるバイク店の社会的機能を否定するものではないが、その多くは将来の拡販に取り組む意欲に大きく欠けていたり、豊かさを感じさせないところが多過ぎはしないか。
これに対してメーカーはどう取り組み、販売力を強化するのか。顧客から見た魅力あるバイクの購買環境をどのように再構築するのか。メーカーは販売店をいかに誘導して自発的・自主的な拡販力を持つ販売店に再構築するのか。後継者不足を問題視する前に後継者のいるところに、どのように将来の魅力のあるビジネスモデルを提示できるか。
いかにメーカーと販売店が連動して、安心・安全・信頼につながる楽しい乗り方、楽しいツーリング、楽しいカスタム、楽しく気軽に参加できるレース(真剣なレースはそれはそれで継続)などを検討して、たとえ小型の低排気量のバイクであっても実用性一本ではなく、今の若者にも楽しさ、カッコよさを感じさせる商品を作り出し、それを売るにふさわしい販売環境を整えることが大切ではないか。
低排気量のバイクには、それにふさわしいカッコの良いライフスタイルがなくてもいいと決めてかかってはならない。イタリア製の50に乗る人たちは、大型バイクとは異なった軽装のウェアを使われているように思う。小型バイクもファッションとして考えてほしい。バイクの母国市場にバイクファションがないことが不思議ではないかと思う。
※2017年1月20日付け号「一字千金」掲載
プロフィール
奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。