今度は良く考えたと思っている。多様な角度から考えた。相手の身になっても考えたつもりだ。それに見合って伝え方も考えた。相手に物事を実行してもらう上では、伝え方こそ大切だから、丁寧にくどい位に繰り返して伝えたつもりだ。しかも要点を忘れずに、相手が誤解しないように伝えたつもりだ。
私がこれほど気を遣って話すこともまれだ。格別に気を遣ったのだから相手には十二分に伝わっていると思う。相手がこれでなおなすべきことが分からなければ、それは相手が悪いのだという気になっている。
さりとて自分で何も具体的に仕事に手を下して見本を見せたわけではない。上司は自ら手を下すのではなく「人にやらせる」ことが仕事だ。こうして上司本人はすっかり相手に「やらせたつもり」になっている。
自分が依頼し、命じたことばだけで相手が理解しているのかどうかは確認しないで、やれるための環境づくりなどは考えもせず、すっかり「やらせたつもり」になっている。
こんな形を経て展開されるマーケティングを私は「つもりマーケティング」と呼んでいる。これでは結果、何の成果にもつながらず、何の蓄積にもならないことに早く気付いて欲しい。
※2018年2月23日付け号「一字千金」掲載
プロフィール
奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。