1980年代のバイクブーム以前から、「SP忠男」は、ブレることなくオリジナルマフラー製作に注力し、今もビジネスの主軸に据える。40年に渡りSP忠男ブランドを支えてきたのは現在、全国二輪車用品連合会(JMCA)マフラー部会理事も務める、同社常務取締役の大泉善稔氏だ。

「2000年からライダー気質と彼らが求める製品の指向が変わった」と語る大泉氏が、同年にスタートさせたのが「1万人ライドオンキャンペーン」と銘打った体験試乗会だ。

体感試乗会では、同社の製品を見てもらうだけでなく、用意した試乗車に乗ってもらい、希望者には現地で自社の適合マフラーへの付け替え作業を行い、実際に自分のバイクがノーマルからどう変わるかを体感してもらうという。これまで20年間継続してきて、目標の1万人まであと3000人を切った。一見すると、手間暇がかかり効率の悪い施策にも見えるが「その逆だし、何より皆が喜んでくれる。ファンに喜んでもらうのがSP忠男の本質」と語る。

画像: 上野から浅草に移転して4年目。「ここは運気が良くて気持ちの良い場所」と大泉氏は話す

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SP忠男は忠さん(鈴木忠男社長)そのもの

──「気持ちイー!」をキャッチフレーズに掲げているが。

「バイクが売れなくなり、マフラーも売れなくなった時、そもそもSP忠男って何か、創業の精神は何かと真剣に考えた。忠さん(鈴木忠男社長)に何でマフラー製造を始めたのか聞いてみたが、その時は寿美子(鈴木夫人)が儲かるって言ったからさと、はぐらかされた。でもどう考えても、社の理念は創業時の忠さんの思いに辿り着く。

ある時、現役時代の忠さんの派手なライディングは、観客が喜ぶからわざとやっていたのでは?と尋ねたことがある。だがそれは違うと。トップを全開で走っていると気持ち良いだろ。自分が気持ち良いからやっていただけ。そんな風に走ると観客だけでなく関係者や周りのみんなが感動してくれるんだと話してくれた。方針は、決まった。そんな忠さんの思いそのものを会社のキャッチフレーズにして、これからやっていこう」

──それを伝えるために何か心掛けていることは。

「現役時代の忠さんの走りに通じることだが、自分が気持ち良く仕事をすることで、周りの人を感動させることが出来る。製品作りはもちろんだが、タイヤ交換も電話対応もすべての業務に共通する。実はこれは創業以来ずっと普通に、社のみんながやってきたことだと気がついた」

──体験試乗会は手間もコストもかかる取り組みでは。

「それは違う。実はたいして手間もコストもかからず、一番効率がよい販促だ。2000年になる頃から、大型バイクのムーブメントが始まり、ライダーの気質や好みが変わった。それに気がつきSP忠男のマフラーも作りをトルク型に変えたが、当時二輪専門雑誌でどれだけ広告展開をしても製品の良さが伝わらず、さっぱり売れなかった。製品には自信があったので、実際にライダーに乗って良さをわかってもらおうと、苦肉の策で体験試乗会を始めた。そこから流れが変わった。体験試乗した人が喜んでくれているのがわかった。SP忠男の本質はそこにあった」

──製品購入に繋がっているのか。

「体験してくれた人の購入率はとても良い。試乗した人ほぼ全員が購入してくれていると言っても、言い過ぎではないかもしれない。製品外観は見てもらえばわかるし、細かい感触は触ってもらえばわかる。さらに乗ってもらうと、品質がわかってもらえる。いわば直球の販促活動だ」

──購入者はどんな人。

「ハッキリ言えるのはSP忠男と信頼関係のある人。父親がマフラー交換に興味のない息子を連れてきたり、子どもが父親にプレゼントするために来てくれたりもする。もはやファンと言ってもよいだろう」

──体験試乗会累計1万人達成が見えてきた。今後の施策展開は。

「SP忠男には各種問い合わせやイベントなど、直接ユーザーと接する業務の専任者(木川聖氏)がいて、彼の存在がとても大きい。彼を中心に、SNSにはさらに注力したい。ここ数年、海外からSNS経由で英語での問い合わせやマフラーのオーダーメッセージが届く。

体験試乗会は準備の都合で関東圏開催が多いが、今後は全国展開したい。多様化の時代、多様なファンに向き合って、"新たな気持ちイー!"を生み出していきたい」

画像: 元証券マンで、昔から旅とツーリングが好きだったと語る木川氏。名刺の肩書きは「ファン創り担当」だ

元証券マンで、昔から旅とツーリングが好きだったと語る木川氏。名刺の肩書きは「ファン創り担当」だ

画像: SP忠男浅草店の外観

SP忠男浅草店の外観

SP忠男浅草店 

▽住所=東京都台東区花川戸2−17−10▽=03-3845-2009▽営業時間=平日10時~19時、土日祝=9時30分~18時▽定休日=水曜日、第1・3火曜日

http://www.sptadao.co.jp

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