㈱マップラン(HD亀戸) 代表取締役 野間健児氏
1969年に本田技研工業への入社が二輪車人生のスタートという野間さん。その後は1987年にホンダウイング店を立ち上げ、現在はハーレーダビッドソン正規販売店の経営者として腕を振るっている。ユーザーには楽しんでもらうことをテーマに日々、仕事に取り組んでいるそうで、そのテーマもシンプルで明快だ。
「まずは出会いがあること。次に集う、そして最後が走ることです。ツーリングはそれをもっとも体験できるイベントとして注力しています。参加者も多いときは100名以上も集まります。同じ趣味の人同士が集まることで車両のカスタム情報はもちろん、仲間意識も高まっていきますから」と、ツーリング企画をメインに力を注いでいる。
お客さんに楽しんでもらう事が一番
ユニークなのは購入1年未満の初心者向けツーリング企画も用意していること。
「ずいぶん前にベテランも初心者のオーナーも一緒に参加していた時のことです。高速のサービスエリアからの出発で、ベテランの先導で本線へ加速して合流する場面があったのですが、後続していた初心者は『置いていかれた』と思い、加速レーン上に立ち止まったことがあったのです。それを教訓に走り方を丁寧に教えるツーリングを企画しました。事故を未然に防ぐこともそうですが、嫌な思いはしてほしくありませんからね」といい、細かな気遣いも見せる。
そうしたライダーへの配慮は、本田技研工業に在籍した当時、安全運転指導員で活動していた際のノウハウが身についていたからだという。
ちなみにツーリングでは休憩の合間に5分間のワンポイントセミナーも開催し、「乗車時の姿勢や車両の取り回しのコツ、後退するときの視線はどこへ向けておくかなどレクチャーします。年配の参加者にも好評ですよ。今まで夫婦の二人乗車で参加していた奥さんが、そこでコツを覚えたことで、大型二輪免許を取得してライダーになった夫婦が18組いますよ」と、顔をほころばせる。
アイディアも豊富だ。
「毎年、チャプターでの活動を小冊子にしています。お客さんの写真を掲載することで家族にも『載っているよ』とか、楽しそうな雰囲気を見せることで喜んでもらっています。形として残るので良いですよ。それと2年に一度、北米へのツーリング企画も開催しています。でも、今年のツーリング企画は海外も含め新型コロナウイルスの影響で全て中止になってしまいました」と、悔しがる。
一方で、自社の運営だけではなくAJ東京の理事長として業界全体のことにも気を配っている。喫緊の課題としてやはり駐輪場の確保だという。
「一にも二にも駐輪所の確保に全力投球です。駐輪場が不足していることで、都内の二輪販売業は日本でも一番厳しい環境です。今、お願いしているのは原付一種のみの駐輪場を、原付二種まで受け入れていただくように要望を出しております。大型二輪が駐輪できる施設の設置もお願いしていますが、原付一種と二種では車体サイズがほぼ変わらないことを説明することで、すぐに着手しやすい案件として要望しています」。
現行の免許制度にも要望があるという。「原付二種の125ccは販売好調ですが、現在の免許制度では免許がないと乗れません。原付一種のように普通自動車免許に付帯してもらいたい。もちろん付帯に向けた実技講習等はあった方が良いです。40年以上業界におりますが、やはり免許制度は需要もそうですし、二輪業界に大きな影響があります。ハーレーもそうですが、大型二輪免許が教習所で取得できたことで、大型車の販売にも寄与しましたからね」といい、すぐに変わるわけではないが、言い続けることが大事と続ける。
ブランドバイク紹介制度 立上げ検討
現在、AJ東京には110もの事業者が加盟しているが、2021年には組合の活動を強化し結束力を高めようと、まだ未加入の二輪販売店へ書簡を送り参加を呼び掛けるという。
そして同年に向けたもうひとつの政策が、新たな制度の立ち上げだ。「新規に『ブランドバイク紹介』という制度を立案して進めています。この制度は従来だと、お客さんから自社と異なるブランドの購入を打診された時、車両を内輪で融通をしていました。業販とも受け取れる行為になってしまいますが、それをAJとして正式な窓口を設けることで公正で対応も素早い、お客さんにとってメリットのある制度として発足させていきます。この制度も未加入の販売店に向けて発信することで、AJ加入のセールスポイントとして活用してきたい」という。
自社のユーザーだけではなく、AJでも組織の運営トップとして、多くの事業者と出会い、集い、そして目標に向かって走っていく……。野間さんのテーマはライフワークでもあるのだ。