トライアンフモーターサイクルズジャパン(トライアンフMJ)は2月15日、BRPジャパンの社長であった大貫陽介氏を新社長として迎えた。企業経営において業務での経験や仕事観、人生観などは組織運営に密接に深く関わるものと思われる。本紙では大貫社長に、仕事での体験やその時々の教訓、培った仕事観などを聞いた。

──学生時代や当時の仕事への思いは。

「将来の仕事への思いは、学生時代以前にさかのぼります。母親の実家が自動車整備工場を営んでいて、夏休みに手伝うなど幼いころから自動車、バイクに触れる環境にあり、乗り物への興味もあって将来は乗り物に関わる仕事がしたいと思っていました。

その一方で5才から近所の英会話教室に通っていたことで、当時は『なぜ日本は日本語しか話さないのか』と、思いました。英語を勉強し、いろんな国の人と話をしてみたいという思いと、乗り物への興味で英語を学び活かせる仕事がしたいと考えていました。

こうした考えで日本で英語を勉強した後、米国へ留学しました。卒業後の就職先は少しでも乗り物に関わる仕事がしたいという思いもあり、米国で日系の鉄鋼商社に就職し、自動車鋼板の営業を約9年間経験しました。

2014年に帰国しましたが、日系企業とはいえ米国で仕事をしてきたため、日本での仕事への取り組み方が米国とは異なる部分が多少あり、帰国当初は衝撃を受けました。

帰国して英語は多少なりとも自信がありましたが、米国では主に南部を拠点に仕事をしていて、英語は南部訛り。日本で話される英語は主にヨーロッパの発音やアクセントに近く、自信を持っていた英語が聞き取れないことが多く苦労しました」

──これまでの仕事で得たことは。

「米国時代では基本的に入社後、OJT(実践での教育)で仕事を教えてもらいながら、すぐに顧客を担当しました。分からないことは教えてもらい、主に自分で取り組みトラブルへの対応なども実戦で学びました。特に米国では個人プレーの印象が強いですが、日本ではサッカーのようなチームプレー。仕事への取り組み方が異なることも経験。会社は日系企業で上司も日本人と米国人双方在籍していたため、さまざまな場面で米国と日本の仕事をハイブリッドで学べたと思います」

「押し付け」でなく、いかに「能力発揮」してもらうか

──記憶に残る上司からの教えは。

「20代の米国時代、ことあるごとに『お前を信頼しているから、自分が信じるようにやりなさい』、問題が生じたら『私が責任を取る』と言ってくれる上司がいました。この上司はトップダウンで指示、仕事を押し付けるタイプではなく、部下が持つ能力をいかに発揮させるかを常に考えている人でした。

私は当時、マネージメントとは部下に仕事を指示し業務を行ってもらうことだと思っていました。しかし、部下に仕事を指示してやらせるのではなく、いかにその人が持つポテンシャル、やる気を引き出してチームとして最大限の結果を出す事なのだと、とても刺激を受けさまざまなことを教えてもらいました。当然、その上司は部下からも信頼され慕われていましたね。

人が能力を発揮するのは、自発的な時に本来の能力を発揮し、それをどうすれば引き出せるのかを学ばせてもらいました。

帰国後に部品メーカーで仕事していた時は、グローバル間でのR&Dやプロジェクト、生産、購買、ファイナンスなどのさまざな部署での仲介、調整を行い新規受注につなげるという状況でも、それまでの商社での経験が役に立ち、日本でも自信を持って仕事ができるようになったと思います。

営業としてはお客様、社内含め関係者に信頼されて頼りにしてもらい、人のために役立つことが生きがいになります」

──仕事はもとより、人生でブレていない、ブレずに続けている事柄は。

幼いころから好きな英語を活かし、完成車の仕事への思いは変わっていません。実はトライアンフは高校時代からの憧れのバイクでした。普通二輪免許は保有していましたが、トライアンフに乗りたいがために数年前に大型二輪免許を取得したばかりです。

なので、この仕事に就いたことで、自分が好きなバイクをもっと多くの皆さんに知ってもらいたいですね」

──自身で思う長所と短所は。

「長所でもあり短所でもありますが、朝の起床から就寝しても、絶えず仕事のことを考えていることですかね。周りの方からすると面白味がないという印象でしょう。ただ、仕事のことを考えていることが好きなのです。考えて実行し、結果が出たときは最高にうれしいですね」

──人として重要と思う事柄は。両親から言い聞かされたことは。

「人としては、客観的に見て自分は『正直』だと思っています。好きなことや嫌いなことに対してもです。例えば、仕事での交渉時においても、常にフェアでいることを心がけています。双方にフェアであり、お互い納得できるところで話をまとめたいです。駆け引きばかりではどこかで相手の方を裏切ることにもつながります。ですから常にフェアであり、正直でありたいと思います。

正直であることは幼いころからすごく両親に言い聞かされてきました。嘘をついた時に大変叱られた記憶があります。物事に対してや自分自身に対しても、正直であるようにと言われましたね。これはずっと染みついているのでしょう。言い聞かしてくれた親に、今でも感謝しています」

──育ってきた環境や経験を踏まえ、会社経営で重要と考えることは。

「会社は人があってこそだと考えています。先にも挙げましたが、仕事をやらされるのではなく、自分自身がやりたいと思ってもらうことで、目標に向かってついてきてくれる、それに伴い結果もついてくるのだと思います。社内だけではなくディーラー網も同様ですが、トップダウンではなく、皆さんの意見を常に聴きながらことを進めていこうと思います」

──今後の計画づくりや、現在の取り組みは。

「基本的な方向性としては、大幅な方向転換は考えておらず、これまでの方向性を継続しつつ、各分野で調整を行いながら進めていく考えです。

ディーラー網では店舗づくりだけではなく『プレミアム・ライフスタイル・モーターサイクル・ブランド』として、内面でも質を高めなければなりません。

潜在顧客様へどのようにメッセージを届けるか、情報の発信方法や時代、地域に合わせた販売方法もあると考えており、こうしたことをディーラー様と積極的に意見交換し新規の販売につなげていきたいと考えています」

取材に答える大貫社長

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