パリ・ダカールラリー(パリダカ)に二輪車で参戦後、ラリーレイドの競技で5回のクラス優勝、8度の準優勝を四輪部門で成し遂げた浅賀敏則さんへの特別インタビューの2回目。前回はNHKのドラマのモデルになった話や、パリダカ参戦時のことなどを紹介したが、今回は二輪車ビジネスについて語ってもらった。
画像: 「二輪車は富裕層に訴求できる商品」
──浅賀敏則氏インタビュー【後編】

株式会社エイシー 代表取締役 浅賀敏則氏

画像: 浅賀敏則氏

浅賀敏則氏

今度はビジネスの話。僕のお店は都心部にあるので、地方の二輪車販売店とはちょっと違うと思うけど、都心だと四輪を持って趣味で二輪車を所有している人が多い。そういう人たちを見てきたおかげで言えるのだけど、二輪車はある程度の富裕層に訴求が出来る商品だと思っている。それに僕自身もモータースポーツも含め、二輪車の魅力をとことん知っているから。やっぱりお客さんと毎日接しているからね。

二輪車の楽しさ、そのモデルの楽しさを提供できているか

あと、僕自身のルールとして決めていたのが、同業者向けの販売(業販)はやらないのと、商用向けの二輪車は取り扱わないということ。業販については多く言わないけど、商用向けについては実用的な使い方が多く、趣味性がほとんどないから。やっぱり趣味嗜好の強い思い入れのある二輪車を売りたいよね。

ちなみに過去の例を挙げると、ホンダのNR750という特別なモデルがあったけど、最後は買い占めてお客さんに販売していたんだから。おかげで今もNR750に乗り続けているお客さんがいるよ

それと、大事なことを言っておくと販売はもちろん、サービスだってしっかり対応するのは当たり前。その先にある『二輪車の楽しさ、そのモデルの楽しさを提供できているか』だと思う。だから、単純に儲けようと思って金銭的なことが表面に出てくると当然、そうしたスタイルにお客さんも気が付くよね。そうした施策だと、説得力を持たないし、何よりビジネスが続かないと思う。

もうひとつ付け加えると、資産を増やして力をつけていかないと有利に戦えない。借金までこさえて仕掛けてそれが成功すれば良いけど、失敗すると目も当てられないよ。なので、資産の範囲内でビジネスは継続していかないとね。

メンテだけの商いは疑問。負のスパイラルは避けるべき

業界を振り返ると、販売の落ち込みや二輪車の駐輪場が少ないせいで、市場がものすごく小さくなってしまった。そんな状況の中、販売店によっては「メンテナンス(修理・整備・車検)だけでビジネスをしていければいい」という声も聞く。

でも、それって厳しいと思う。そんな小さなスケールでビジネスをしていると、それ相当の活動や見返りしか得られなくなると思う。営業もしづらいし、これまでのお客さんや仲間たちから仕事を得られても、大きな利益が生み出せないから。数ばかりこなすようになり、その結果、忙しいばかりで儲けが少ないパターンに陥るのではないか。それは負のスパイラルだよね。

昨年に続き今年も新型コロナウイルスの影響で大変な時代になったと感じている。でも、それは受け入れなければいけない。二輪車は3密を防ぐ乗り物として再び認知されているという声も聞くけど、四輪に比べ安全性が低いことや都心では駐輪場が少ないことなど、解決すべき問題は多い。

環境面でも二輪車は冷遇されている。特に50cc(原付一種)に対しての排出ガス対策は過剰だよ。四輪のボディサイズや燃費から比べると、一人が移動する乗りものとしてこれほど環境に貢献している乗り物はないでしょ。これを機会に政府も抜本的な交通手段の見直しを図って欲しいよ。

もうひとつ付け加えたい。昨年、若手の芸能人がクルマを運転中に二輪車と交通事故を起こした件についてだ。加害者側ばかりが報じられているけど、被害者側にも目を向けてほしい。四輪と二輪車が関係する事故はUターンや右直(右折と直進)が多いと聞くが、くだんの事故もUターンで起きた出来事だったようだ。四輪から見ると二輪車は弱い存在。四輪は二輪車にもっと注意を払って欲しいよ。

二輪車は豊かなライフスタイルを得られる凄く素敵な乗り物

コロナ禍の状況が続けば、多くの人の経済力が落ちてくると思う。しかし、金銭に余裕がないからと言って四輪から二輪車へ乗り換える、というのは少し違うと思う。メーカーや販売店はそうしたPRはするべきではない。

“脱炭素社会”を標榜し、二輪車に乗ることが“スマート”であり、“ステータス”になれば販売に繋がると思うけど。実際に欧州ではそうした動きもあるが、日本とでは二輪車に対する文化が大きく異なるからね。

二輪車は豊かなライフスタイルを得られる凄く素敵な乗り物。ある程度危険性はあるけど、五感へダイレクトに訴えてくるプロダクト。僕も最初に二輪車でモータースポーツを始めて、それから四輪へ転向して、再び二輪車へ戻ってきた。最近はヴィンテージモトクロスといって、歴史の名車(写真)で参戦してレースを楽んでいるよ。なぜ、再び二輪車へ戻ってきたかというと、やっぱりいまだに未完成な乗り物だと感じるんだよね。

停まっていると、支えなければ倒れちゃうし、最初は上手く乗りこなせないんだけど、少しずつ慣れてきて操ることを覚えることで、人間的にも成長していく。奥深い魅力があるよ。 (おわり)

画像: 現在も店頭で接客のほか車両の整備を行うなど、休んでいる暇なんかないという浅賀さん

現在も店頭で接客のほか車両の整備を行うなど、休んでいる暇なんかないという浅賀さん

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