普段、眼鏡を使用しているときは問題ないが、乗車時にヘルメットを被るとずれて合わなくなる、あるいは乗車姿勢で視野が変わることに悩む人も多いはず。今回はそんな悩みを解決してくれる、二輪愛好家へ向けた眼鏡を製作してくれる専門ショップ『グラス・アーカス』の辻村正幸さんに話しを聞いてみた。※2021年5月取材時
画像: 自分と愛車に合った眼鏡で
安全で楽しい二輪車ライフを

グラス・アーカス ショップマネージャー 辻村正幸氏  ※2021年5月取材時

画像: 製作者で店舗マネージャーの辻村氏  ※2021年5月取材時

製作者で店舗マネージャーの辻村氏  ※2021年5月取材時

自身も普段から二輪車を楽しんでいるという辻村さん。老舗百貨店での眼鏡販売や大手眼鏡チェーン店などを経て、現在は埼玉県熊谷市のJR熊谷駅から近い場所に立地する店舗のマネージャーを務めている、眼鏡のプロである。

二輪車用に特化した眼鏡を作りはじめたきっかけを聞くと「職業上、普段からファッションアイテムとして眼鏡をかけていたのですが、40歳頃に乱視になったのを機にバイクへ乗る時にも眼鏡をかけるようになりました。でも、ヘルメットを被った時に眼鏡がずり落ちてきたり、頭も痛くなってくるなど違和感があり、自分でフレームを加工して使いやすくしていたんです。そこからヘルメットを被った時でもフィットした眼鏡が作れないか、試行錯誤して今のカタチを作りあげてきました」と、振り返る。

普段はなんともないが、ヘルメットを被ると収まりが悪く、違和感や痛みを訴える人は少なくないそうで、例を挙げると顔が小さい人の場合、ヘルメットのスポンジに押されて眼鏡が前に押し出されることがあるという。

二輪用の眼鏡ではそうした悩みを解決できるように、ヘルメットを着用したときのフィット感にこだわっており、素材はもちろんフレームも細部の形状を変えている。「鼻にかかる位置も一般的な眼鏡の基準値より1.5mm下げて製作しています。フレームもステンレスを使用しているので、簡単に曲がったりしません」。実は、人の目も位置がきちんと左右対称ではなく、極端な例だと瞳孔の位置も左右で高さが微妙に違うこともあり、千差万別だと辻村さんは続ける。

そうした眼鏡作りから得た知見でレンズはもちろん、普段使うヘルメットに合うようにフレームも含めて仕上げていくのだが、特にフレームについては一家言あり「2年ほどフレームメーカーさんへ休日を使って、製作のノウハウを教えてもらいに通いました。おかげで金型から作れるようになり、狙い通りの商品を提供できるようになりました」と力強く述べる。

ちなみに眼鏡を収納時、フレームを折り曲げた時にはレンズへ干渉しないように途中で止まるようになっているなど、細部にまでこだわった仕様になっている。また、フレームも赤や緑、黄色などカラーバリエーションを数色用意しており、オーナーも自分の愛車のメーカーに合ったカラーを選ぶ傾向にあるという。

画像: フレームのカラーも赤、青、黒、白など豊富にラインアップする

フレームのカラーも赤、青、黒、白など豊富にラインアップする

競技者が訓練で使う機器で測定

一方で、年齢を重ねていくと目の衰えも悩みになってくるが、他にはないグラス・アーカスの真骨頂がこの行程。深視力や動体視力、目と手、身体がきちんと反応するのか協応動作と呼ばれる反応測定や、瞬間視記憶まで測定する機器を用いてチェックしていくのである。「バイクだと奥から手前に流れていく動きの認識が重要です。それには深視力と動体視力を測定するのが一番。それにくわえて『スポーツビジョン』(Vトレーニング)というスポーツ選手やプロのレーサーたちがトレーニングに使う機器を使用しています。

目と手の協応動作はとっさのときに手と身体が反応するのか、瞬間視記憶だと走行中に標識をキチンと認識できるか、バイクに乗る人にとっては重要な項目が測定・数値化できます。スポーツ選手のトレーニングで使われていたのですが、バイクへ乗る際にも有効だということが分かったので、製作工程に取り入れています。

これまで注文されてきたオーナーのみなさんも、衰えは認識しているのですが、数値で確認できることで得心されるようです。自分に合った眼鏡を装着することで、安全で楽しく快適なバイクライフが送れますよ」と、強調する。

画像: スポーツビジョン(Vトレーニング)では図柄や数字がモニターに表示され、目と手の協応動作や瞬間視記憶などさまざまな項目が測定される

スポーツビジョン(Vトレーニング)では図柄や数字がモニターに表示され、目と手の協応動作や瞬間視記憶などさまざまな項目が測定される

まとめるとグラス・アーカスでの二輪車用眼鏡の製作過程は下記のようになっている。

①視力を測定②深視力と動体視力、スポーツビジョンによる測定③前記の測定を元にフルオーダーのレンズを製作④フレームを製作⑤愛車とヘルメットに合わせる──。

フルカウルのスーパースポーツならば前傾姿勢が強くなるので、それらを想定して製作。アップライトな乗車姿勢のネイキッドでも若干、前傾姿勢になるというが、いずれも最後は店舗まで愛車に乗ってきてもらい、ヘルメットを被ってもらいメーターやミラーがちゃんと見えるか確認。細かな調整を経てトータルでコーディネイトしている。

最後はヘルメットを着用し、愛車と一緒に調整

さらにサーキット走行を楽しんでいる人には走るコースまでヒアリングしている。「鈴鹿サーキットなら、遠方まで見えた方が良いですし、桶川サーキットのような小さいコースであれば視野角が広い方が良い。コースによってフレームもレンズも変わってきますよ」という。

なお、製品の特性上、通販はおこなっておらず、1日あたり対応できる人数も限られているそう。「計測は一人あたり2時間くらいかかります。なので、1日あたりに対応できる人数も最高でも4名ほど、最後はバイクに乗車してフィッティングをおこなうので、通販では対応が難しい状況です」と打ち明ける。

フレームは二輪にちなんだ名称が付けられており「ダウンドラフト」と「ホリゾンタル」をラインアップ。ダウンドラフトはレンズ位置がヘルメットの内装に左右されにくいフローティング構造となっており、ホリゾンタルは幅広いシーンに対応したシンプルなデザインとなる。二輪車向けにはダウンドラフトをオススメしているという。費用は前者が3万9800円(税込)、後者が2万9800円(同)。レンズはフルオーダーで別費用になる。製作期間は1週間ほど掛かる。

画像: ダウンドラフトのフレームはレンズがフローティング構造で、鼻にかかるノーズパッドのクリングスアームも一般製品に比べ太くなっている

ダウンドラフトのフレームはレンズがフローティング構造で、鼻にかかるノーズパッドのクリングスアームも一般製品に比べ太くなっている

現在も引く手あまたで多くの人が訪れるというが、最新アイテムも開発しており、今度はオフロードのゴーグルで着用する利便性の高い商品をラインアップするという。「日中、日が差さない暗いところでも視認性を向上させた商品です。一般的な日差しをカットする色付きの商品だと、日が差している状況では良いのですが、日が差さないところは逆に暗くて見にくくなります。そうした状況にも対応しています。四輪のラリー競技でも使っていて効果も高いです」。

一方で、ゴーグルに着用する度付きのレンズは以前から用意しているといい、セットで用いることで林道ツーリングでは威力を発揮しそうだ。週末ツーリングからサーキットに林道まで、あらゆる状況に応じた二輪向け眼鏡を用意するグラス・アーカス。よく見えるようになることで、ますます愛車との付き合いが深くなるに違いない。

画像: 左がゴーグルに装着する最新商品。色味の異なる数種類をラインアップ。右はゴーグルに付ける度付きのレンズ。上下のフレームでしっかり固定される

左がゴーグルに装着する最新商品。色味の異なる数種類をラインアップ。右はゴーグルに付ける度付きのレンズ。上下のフレームでしっかり固定される

※2021年9月2日より辻村氏はグラス・アーカスから独立し、
「72 eye works」代表として就任。新店舗は下記を参照。
▽所在地=埼玉県鴻巣市赤見台1丁目7-3
▽営業時間=10時~19時
▽定休日=水曜日
▽☎.048・514・8508
https://www.72eyeworks.jp/ (セブンツーアイワークス)

紙面掲載日:2021年9月3日号

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