①愛車の空気圧②燃費
新車でレッスンにやってきた受講生から「ぜひ乗ってみて」と言われた。乗ってみたらタイヤが異様に跳ねる。チェックしてみたところ、標準数値の約2倍の空気圧になっていた。
さっそく空気圧を合わせようと受講生に規定値を尋ねてみたが、愛車のタイヤ規定値を知らなかった。
タイヤ空気圧値の書かれたシールが貼ってある場所を教えつつ、「前後輪それぞれの数値を覚えて、ひと月に0・1kg/㎠センチ前後は確実に減るから、空気圧チェックは月初めに行うという習慣をつけるといいよ」とアドバイス。操縦性と燃費の悪化、偏摩耗、パンクしやすいことも伝えた。
ガス欠も今なお多い。満タン容量、平均燃費、リザーブ量も機種ごとに異なるので、事前に調べ把握してもらう。「走行可能距離」が表示されないバイクなら、なおのこと大事な情報だ。
満タンから、どれくらいの走行距離で燃料警告灯のランプが点灯するのか。スポーツバイクなら、一般的に燃料警告灯が点灯してから50km前後が限度など、具体的な数値を伝える周到さがお客様への本当のおもてなし。
③交差点事故率70%④死因の40%
お客様にバイクを安全に乗り続けてもらうために役立つ、安全直結の代表数値は70と40だ。
まず交差点。交差点の事故は都市部では全事故の70%を占めている。特に多いのが、バイクの直進時に対向右折車と起こる重大な「右直事故」だ。
バイクを購入したお客様には、「初心者でもベテランでもこれだけは忘れないでください」と前振りして、「交差点通過は速度を抑えて、前後フルブレーキできる準備をしたまま通過する」というメッセージを伝え続けてほしい。
強烈なブレーキに自信がある私でも、速度を落とし交差点手前で必ずフルブレーキの準備をしている。「法的に直進車優先だから」では、自分の命は守れない。
次に40。頭部強打の40%とほぼ同率で、胸部強打が死因になっている。胸部プロテクターの普及率は今なお非常に低いのが現状だ。
もちろん運転スキルアップの講習は大切だが、「タイヤ・燃料・交差点・胸部プロテクター」──命を乗せるバイクのこの「最優先4大数値」を直視してもらうだけで安全率は大きく上がる。
納車説明時や来店時にこの4点に絞った数値のメモを渡すのも、あなたのショップが好印象になる手法かもしれない。
この4大数字を使って、お客様とスタッフに役立つ情報を常に提供し続ける。バイクを売るだけでなく、安全・安心・快適を生み出す数値を知って、二輪車ライフを楽しむショップであり続けてほしい。
プロフィール
柏秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員の意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授や情報交換をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。