二輪車用アパレルメーカーのクシタニが、2021年9月、静岡県浜松市のクシタニ本店を移転してリニューアル。大型倉庫のような外観の店舗内には「櫛谷商店」を復元。1947年に当地で創業した雰囲気をそのままに、細部に至るまで再現している。原点回帰とも言うべき取り組みについて、同社の広報であり、クシタニ東京代表でもある櫛谷信夫氏にリニューアルに込めた想いを聞いた。

クシタニ広報部 櫛谷信夫氏

画像: クシタニの広報とクシタニ東京代表を兼任する櫛谷信夫氏

クシタニの広報とクシタニ東京代表を兼任する櫛谷信夫氏

今回のリニューアルの陣頭指揮を執った櫛谷氏、前述の櫛谷商店は1枚の写真から復元していったと述べる。「会長(櫛谷久氏)に写真を見てもらい、話を聞きながら再現しました。前回開催された東京オリンピックよりも前に営業していたお店です。当時のことを知る人たちからも話しを聞いて細かいところまで手を入れています。実は最初に出来たときはあまりにもエイジング(経年加工)をやり過ぎて、写真の印象とは少し異なってしまって……。2回目でようやく納得がいく仕上がりになったと思います」

建物はもちろん、当時の電話番号が書かれた看板もそのままに、軒先の日よけのデザインまでも再現。居住の一部である2階へ上がる階段まで作り込んでいる。リニューアルの構想は日頃から温めていたというが、アイデア自体は実に20年以上前に入社した時から持っていたという。

「クシタニの基本は今も昔も対面販売」

きっかけを聞くと「クシタニの基本は今も昔も対面販売です。特に昔は、まずバイクのウエアや装具は安心・安全のために必要だという話から店頭でお客様にじっくり説明をしていく必要がありました。今ではお客様も『必要不可欠な装備だよね』と十分に認識された上で来店されるケースが増えたと思います。安全に対する認識が高まる中で、ここ数年はSNS(会員制交流サイト)や動画コンテンツ等による情報収集もしやすくなった事で『この商品を見に来ました』と商品自体の知名度の高まりも感じられるようになりました」

「でも、やはり専用ウエアということで、お客様には出来れば店舗へ来ていただき、オートバイの楽しみ方やお悩みなどを色々お聞きした上で最適な一着をご提案したい。クシタニが創業した頃は当時から自社内に職人を抱えていたということもあり、駆け込み寺という位置づけで、お客様一人一人の要望に応えてきました。そのような経営スタイルではなくなった今でも、困っているお客様と一緒に考えたい、お客様の喜ぶ顔が見たいという基本は変わりません」と語る。

また、櫛谷商店の再現は店舗で働く若いスタッフたちに販売の原点を伝えたいという想いもあったという。「創業当時の姿を実際に目にすることで、人と人との繋がりや受け継がれてきた想いをよりイメージしやすくなると思いました。創業から74年、自分たちがどのようにお客様と関わり、ものづくりに励んできたかを改めて共有し再確認することは、今後の取り組みにも活かされると思います」と思いを募る。

これはさっそく、オープン記念イベントで実現することになる。業当時は革ツナギの縫製で余った革を用いてコインケースを製作し、プレゼントしていたそうだが、今回のオープンに際しても同様に、革ツナギの余り革で製作したコインケースを記念品として贈呈することにし、こちらも人気だったそう。また、復元された店舗内にはミシンを設置しており、お客様に向けてモノ作りを体感できるサービスを実施している。

画像: 約600平米もの広さを誇るクシタニプロショップ浜松本店

約600平米もの広さを誇るクシタニプロショップ浜松本店

その一方で、クシタニの事をもっと多くの人へ知ってもらうために積極的に展開している事業がある。クシタニカフェだ。「そもそもバイクウエアメーカーであるクシタニは、バイクを所有して乗ることになった後に知るブランドだと思います。つまり、バイクに関わらなければクシタニのことを知る機会すら無い可能性が高い。そうした人に向けて、まずはクシタニというよりも、バイクのある生活を知ってもらう事が重要だと思ったのです。知らないとその先がないし、知らない人へのアプローチは大事です。クシタニカフェを立ち上げたのも、そうした間口を拡げる取り組みの一環でした」と述べる。

「今では全国にクシタニカフェは4店舗、高速道路のサービスエリアや観光スポットに立地している店舗もあり、二輪車ユーザー以外の大勢の人に利用してもらうことでバイク文化に触れられる場としての機能を果たしている。さらに、クシタニの全製品に加え、革財布等、日常生活で使えるアイテムを幅広くラインアップする『クシタニパフォーマンスストア』も全国に3店舗展開。こちらもそれぞれ高速道路のサービスエリアや道の駅、ショッピングモールと二輪車ユーザー以外も立ち入りやすい場所にあり、良い意味で入店の敷居を下げ、気軽に商品を手に取ってもらえる環境を作っている。

また、最近では動画コンテンツの制作も行っており、それらの動画を見た地方の自治体からライダーを呼んで町おこしをしたい、という相談を受けることが出てきたという。「地域創生に繋がるのであればと、積極的に協力しています。そのエリアの景勝地やグルメスポット、バイクで走るのに気持ちが良い街道などを紹介しています。安心・安全に対する訴求も大事なテーマなので、登場するライダーは当社製のバイクウエアを着用していますが、それ以上に『行ってみたい、バイクで走ってみたい』と見た人に思っていただけるようなコンテンツを目指しています」という。

画像: 復元した櫛谷商店。店舗前にある車両はヤマハYDS-3。櫛谷氏が持つ商品受け渡しの紙バッグにも当時の商店がプリントされている

復元した櫛谷商店。店舗前にある車両はヤマハYDS-3。櫛谷氏が持つ商品受け渡しの紙バッグにも当時の商店がプリントされている

「バイクのある生活を知ってもらうのが大事」

全方位でクシタニブランドを“絶賛配信中”だが、今後の構想も膨らんで止まない様子。「バイクでずっと遊べる仕掛けを考えています。バイクにずっと乗り続けて、さらに趣味が拡がっていく。そんな取り組みを考えて、今は準備を進めています。また、以前よりも女性ユーザーが増えたことで、要望の多い女性向けのラインアップも増やしていきたいと思っています。専門店となるとどうしても入りづらい雰囲気が出てしまいますから、専門性と、どのようなお客様にも気軽にご来店いただけるような雰囲気づくりを両立していきたいですね」と力強く述べる。

アパレルメーカーとしての枠組みを超え、バイク文化そのものを盛り上げたいと奮起するクシタニ。どんな仕掛けを打ってくるのか待ち遠しい。

画像: 「バイクのある生活を知ってもらうのが大事」

◆クシタニプロショップ本店 
▽所在地=静岡県浜松市南区白羽町662-1
▽営業時間=10時~19時▽定休日=水・木曜日
▽℡053・488・8884

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