家族の中で一人だけがバイクに乗る!というのもいいが、今回は「家族がバイクに乗る」「家族全員がバイクに乗る」バイクライフについて考えたい。

つい先日、バイクが大好きな御夫婦と二人の息子さんというバイク一家が、ライディングレッスンを受けてくれた。息子さんは若いから、1つ教えただけで5つ覚えてくれる勢いだったが、奥様は小柄で非力なため取り回しひとつでも大ごと。練習前から「私には無理!」と言って逃げ腰だった。

重量のある大型バイクのセンタースタンド掛けは体力的に無理でも、せめて自分でセンタースタンドが外せるようになれば、好きな時にどこへでも出かけられる。これを含めて、スイスイと気軽にバイクの取り回しができるようになりたいという。

そのために小柄な人でも安全確実にできるセンタースタンド降ろしの方法などを伝授したが、家族で支え合いながら練習を繰り返す姿が実に素晴らしかった。

自分だけの問題にせず、家族の力でやり遂げる。何よりもここに大きな価値がある。

旦那様も還暦を過ぎて体力低下を実感しているところ。大きなバイクが負担になって、中型車にしようかと弱気だ。でも、ちゃんとした練習方法を知ることで現状維持ができるし、やり方によっては今まで以上にバイクの扱い方がラクチンになる。

すぐに上達できなくても、練習方法を息子さんたちに伝授しておけば、お父様のサポートが効果的にできる。サポートする側の息子さんも他の人にノウハウを教えることで自分も大きな成長ができる。末長く、楽しく家族全員でいろいろなバイクに乗り続ける。それは紛れもなく、この世で最高のことだ。

4人家族がバイクで旅するだけで十分に素敵なことだが、目標とする乗り方や理想的なサポート方法を共有することで、家族の絆がもっと強くなる。バイクが家族のための最善のコミュニケーションツールになる。

バイク好きの家族にするために、タンデムランは重要な導入のひとつ。でも方法を間違えると逆効果になる。

私より100倍速いレーシングライダーAさんは、息子さんとのタンデムで失敗。「もう乗りたくない」と言われてしまったという。

別の友人Bさんは彼女と結婚までこぎつけたが、彼女をリアシートに乗せて走ったものの「結婚はするけどバイクには二度と乗らない!」と言われた。そんな失敗エピソードが私の周辺には山ほどある。

とにかく初めてのタンデムは片道30分程度。美味しいもの、楽しいことを目標地点に定めてほしい。彼女にしても子供さんにしても最初が肝心。最初のタンデムは絶対にソフトな運転で「近距離・短時間・楽しい思い出作り」が最優先だ。

バイクショップは「お客様の家族」をヒントに、バイクという機械の販売以外のお手伝いもできるといいと思うが、いかがだろう。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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