(一社)MRS(モトライダースサポート)は9月10、11日、初の大型イベント「モトライダースフェスタ2022in箱根」を開催した。会場はアネスト岩田ターンパイク箱根、アネスト岩田スカイラウンジ(大観山駐車場)、バイカーズパラダイス南箱根、十国峠レストハウスの4カ所。レーシングマシンのデモ走行やストリートバイクのパレードラン、カスタムバイクの展示、新車試乗会、ブース出展、トークショーといった多彩な内容となった。
11日朝、アネスト岩田ターンパイク箱根でのレーシングマシン走行を行うにあたり、MRS理事長・加賀山就臣氏は開会式でこう呼びかけた。
「お客様が自分の好きなジャンルを見て楽しめるような、オールジャンルのイベントとした。今日は何より無事に終わらせて、2年後、3年後には『走れる、走ってもらえるモーターサイクルショー』を目指したい。今回は不備だらけだけれど、来年さらに修正していければ」
そうして全日本選手権や鈴鹿8時間耐久、テイスト・オブ・ツクバといったロードレースを走るレーシングマシンをはじめ、ヴィンテージレーサーやカスタム車両がターンパイク箱根を疾走。続いて、これも日頃はターンパイク箱根を走行できない125cc以下の二輪車による「カブクライム」などが行われた。ターンパイク箱根の貸し切り使用にあたっては(一社)SSP(サイドスタンドプロジェクト)と午前・午後で分け合った。事故などで障がいを抱えた《パラモトライダー》の二輪車走行をサポートするSSPも、この9月11日にイベント「やるぜ!! 箱根ターンパイク2022」を開催。正午過ぎから夕方5時まで、パラモトライダー14名と友人たちによるツーリングを実施していたのである。
また、アネスト岩田スカイラウンジでは新車展示会や試乗会が催され、バイカーズパラダイス南箱根ではトークショーや用品部品ブースが登場。十国峠レストハウスでもカスタム車両やパーツ展示、ハーレーダビッドソン試乗会などがあった。MRSの発表では、2日間に集まった二輪車は約2650台、来場者は約3700人にのぼる。
「実を言うと、ここまで大事にするつもりではなかった」
初のイベントを終え加賀山氏は打ち明ける。コロナ禍にあって、三密を避ける移動手段として二輪車が再び脚光を浴びたことは周知のとおり。加賀山氏の家族も通学のため新たに二輪免許を取得したという。が、若い初心者たちが楽しみ方を知る機会は、まだ十分に得られていない状況ではないだろうかと危惧する。
「一人でも多くがバイク好きに育ってくれたり、モータースポーツに興味を持ってくれたり。そうなるために、何かできないだろうか」
二輪車とモータースポーツの素晴らしさを広めたい加賀山氏は、考えを巡らせた。その結果、「仲間づくり」「安全に楽しむ場所」が欠かせないという結論に至る。
「バイクを通じて年代も性別も超えた仲間ができる。そんな場に誘われることがきっかけでバイク好きになるもの」
そうした経験を提供するためMRSを設立し、モトライダースフェスタを開催したのだという。
一般公道を知るライダーであり、ロードレーサーとして長く活躍した。そんな加賀山氏らしい企画として、ロードレーサーやクラシックバイク、カスタムバイクを箱根の地で、観衆の前で走らせる構想が浮かんだ。そこには名だたる日本車メーカーの協力をぜひ得たいところ。「できればMotoGPマシンも走らせたい」が、公道走行となると安全性の担保が必要。ならば実績作りだ、となった。
とはいえ4会場での大規模イベントという形になったのは、開催まで2カ月を切った頃だった。
「やはり同じ思いを持つ方が多かったのではないか。一緒にやろう、あれもやろう、といった具合に協力者が増えて大掛かりな企画に」
準備期間も経験もない中、計画は膨らんでいく。状況を整えて1年後の第1回開催を目指すという選択肢もあったろう。しかし、それでも加賀山氏らMRSは「未完成でも『安全に終わらせた』という実績を残す」と、決断した。
かくして土壇場に決まり、関係者らがSNS(交流サイト)で情報拡散しただけの手作り感あるイベントが開催された。それが約3700人という集客を達成し、交通事故も大きなトラブルもなく終えることができた。
「われわれ運営側が計測不能になっていたもので、本当はもっと多くの方が来られていた可能性はあるが……」
そう苦笑いする加賀山氏だが、ともかく安全にやりきるという第一の目標は達成した。来年も安全性を重視しつつ、より大きなうねりを起こしたいと考えている。
「ショーで展示されるような車両が、音を出して目の前を通過する。その空気感をより多くの人に味わってほしい」
ストリートとモータースポーツが融合する場で、筋金入りの「バイク好き」がいかに育つか。MRSの来年に向けた動きが注目される。