㈱リバークレイン 代表取締役社長 信濃孝喜氏
──西日本に物流拠点を構築した背景と狙いは。
「兵庫県の鳴尾浜において『甲子園フルフィルメントセンター(以下・甲子園)』を開設しました。当初は2022年秋頃からの稼働を予定していましたが、現在稼働している横浜FC(神奈川県大和市/以下・横浜)、座間FC(神奈川県座間市/以下・座間)との連携に時間を要しました。その目処が付いたため、今年4月から本格稼働させていきます。
西日本の物流拠点の構想は10年以上前からありました。1つには取り扱う商品点数が膨大になってきたことです。現在、在庫している商品点数は約25万点で1日あたりの出荷数は約7000点になります。東と西、2つの拠点を分散させることで、安定した供給網を構築できるほか、局地的な自然災害にも備えることができます。
もう1つは物流コストの削減。これまで全国への配送は全て横浜と座間に集約していましたが、西日本エリアを管轄する拠点を設けることで、物流コストを引き下げられるほか、同エリアのユーザーへお届けする時間を短縮することができます。これまで四国や九州方面は翌々日でしたが、今後は翌日到着が可能になります。
特に販売店様からの注文も多い純正部品等は、早くて安定した出荷が可能となるので店舗で部品の在庫を持つ必要がなく、ピット・メンテナンスサービスの迅速化が図れます。我々が止まると販売店様の業務にも支障が出てきます。止めるわけにいきません。
さらに大きな問題として、物流業界の2024年問題(※)があります。これまで安定していた東京・大阪間といった長距離輸送などに今後、支障が出てくるかもしれません。国が定めた事なので、弊社だけでカバーできるものではありません。そうしたこともあり、拠点の分散を早めに構築することを決めていました」
【2024年問題】
※働き方改革関連法により、24年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限される。施行で長時間労働が発生しやすい長距離輸送業務に大きな影響が出るとされるほか、ドライバーのなり手不足もあり、物流業界全体に影響が及ぶと言われている。
AIも導入。メーカーと供給以上の深い関係築く
──既存の拠点も拡大して新たな施設も立ち上げました。
「甲子園の開設前には横浜の拠点を拡大し、座間も22年夏に新規稼働させました。甲子園では900坪、横浜は1200坪、座間は1500坪の面積を有しています。ちなみに横浜ではこれまで別拠点で運営していたカスタマーサービス部門も一緒にしました。ユーザーからのクレームや返品された商品を実際に見て共有することで、問題点の改善や効率化など品質向上へ役立てています。
また、弊社では創業以来ウェアハウスマネジメント(倉庫管理システム)を自社で開発しています。最近では、これまで販売したデータを蓄積したAI(人工知能)を使った商品の需要予測も行っていますが、このAIも自社開発です。AIを用いたことで今ではメーカーさんとも商品の供給だけではなく、もっと深いところまで踏み込んだ関係が築けるようになりました」
──甲子園での業務体制と、当地で採用するスタッフの人数は。
「甲子園ではメーカーからの商品を入荷してユーザーへ出荷するオペレーション業務だけではなく、西日本エリアの二輪車販売店様を訪問営業する部門も配置します。今回の拠点追加で、弊社のサービスを最も享受できるのが同エリアの販売店様です。店舗のサービス向上に役立てることを直接お伝えしていきます。
現地スタッフですが、約50人を採用する予定です。弊社はパート・アルバイトを含め現在、約400人が働いていますが、Eコマースはオペレーションがメインで、多くの人手を必要としています。物流拠点では常時150人くらいが勤務し、一部ロボットの作業もありますが、二輪車用品はマフラーなどの大型商品から、純正部品ではシール・パッキンなど細かい商品もあり多品種多様です。そうした商品の仕分けは人の手で集荷・梱包せざるを得ない。
また、そうすることで梱包サイズも最小限の大きさに収まるようにしています。弊社は創業10年までは通過形の物流モデルでほぼ商品在庫がなく、オペレーションに注力してきました。現在もオペレーションは重要と考えています。
一方、発送システムでは配送エリアや梱包サイズでユーザーにとって利便性の高い配送業者に仕分けており、その仕分けも自動で行えるようになっています。これも弊社で開発したシステムを使っています」
──原油価格や物価上昇による配送業者の送料値上げも聞きます。対応は。
「輸送費用は24年問題もあり今後、上昇するのは避けられないのでは。弊社でも、物流コストの上昇分は吸収できるようにしていますが、最終的にはユーザーに対しての値上げは避けられないと思います。先ほど申し上げた自動振り分けのシステムを導入したのも、各配送業者に振り分けることで費用を自分たちで吸収・コントロールできるからです。
他社のEコマースでは、1社の業者にお願いする仕組みになっているようですが、それではリスクが高くなるのと、最適なサービスを提供できないから、という理由もあります。弊社では早くからそこに着目してシステムを自前で作り上げてきました。大手のEコマースでも、そこまでの仕組みは持っていないと思います。
弊社は二輪車業界のサプライチェーンで、物流のプラットフォームを担っていると自負しています。また、創業以来、常に新しいことに挑戦し続けてきました。今回の西日本物流拠点開設は新たな挑戦でもあります。今後もチャレンジ精神で、二輪車業界のサプライヤーとして業界を支えていきます」