若い世代に限らずライダーの一定数は、旧いバイクに強く興味を持っているという事例について、以前この連載で触れました。バイクがバイクである以上、まずは触れること、そしてどんなに古いバイクであっても乗れることの喜びは絶大です。

でもそれ以上に、ライダーが手に入れたいのは、もしかすると人とのやりとりなのかもしれません。これが今回の本題です。

バイクショップがお客様からニーズをなんとなく感じても、何かと忙しい業務の中でそのお客様との対話ができてないことはないでしょうか。

何気ない会話はできているのですが、常にお互いに一定の距離がある雰囲気。でもその距離をわずかでも縮めようとすると、お客様は逃げるかもしれない。人との距離を縮めるのは、簡単なようで意外にむずかしいことです。しかしバイクショップの在り方として、これは外せない重要テーマだと思います。

バイクから降りないお客様こそが業界の財産

数が売れている時はウハウハでも、そうではない時に取り繕っても時すでに遅し。販売の波がどう変化しても、継続すべきは一人ひとりのお客さまへのケア。それはとても面倒ですし、効率が悪いかもしれませんが、バイクショップの本質は、ユーザーに安全に、楽しくバイクに乗り続けてもらうことです。

モノを売るだけじゃないその姿勢に共感してもらうこと。共感してくれたユーザーと触れ合って、バイクの楽しさやバイクから受け取れる感動をもっと大きくしていくこと。そうしてバイクに乗り続けてもらう。

5年後も10年後もさらにその先も、バイクから降りないお客様こそが業界の財産になるのではないでしょうか。

お客様へはハガキを定期的に出している、ショップ主催のツーリング企画などを開催している。そんなのは当たり前だと言われるショップが多いと思いますが、その一歩先の話として、たとえばバイクの取り回しが問題で車庫の出し入れで苦労しているお客様がいたら、どんな個別対応ができるでしょうか。忙しいから無理という答えは誰でも出せます。

ショップから話を持ちかけるのもありかもしれません。用事が済んだらさっさと帰る忙しいお客様もいるでしょうが、一方で時間がある方もいらっしゃるでしょう。「ちょっと道草してみませんか」とは言えないですが、道草はお客様と話題を共有できる大事な時間。まずは与太話からでもいいから、5分でもいいので 時間を割く。そして要約した内容をスタッフと共有する。

もちろん販売台数は大事ですが、お客様それぞれに応じた個別のコミュニケーションをとること。これはショップにとっても、業界にとっても不可欠な顧客ケアなのではないでしょうか。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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