先日、「ダート・エクスペリエンス」というオフロードイベントの講師として、タイ国へ出張してきました。

土曜日はビッグオフ系ツーリングライダーがメイン、日曜日は450ccまでの中級以上のライダーを担当。いずれも午前中はクローズドコースで基礎練習。午後は林道へ、という設定でした。

タイの中心となるバンコク市内は、まさに混沌。朝夕の大渋滞の中をバイクが縦横無尽に駆け抜けていきます。日常の足として使うバイクの数は非常に多いのですが、それはクルマの移動によるタイムロスとコストを避けるため。高温多湿なだけでなく国民性なのか、義務になっているはずのヘルメットを着用せず、グローブもなし。プロテクターを装備するライダーを見ることはありませんでした。

3名以上の乗車はまれになっていますが、逆走ライダーは幹線道路でも多く見られました。道路行政が機能せず、遵法精神やマナーより、とりあえずアクシデントさえ避けられたらそれでよし、という走りばかり。当然、バイクの事故件数は高止まり。タイ国内の交通事故による死者数は年間1万人を超え、日本の交通事故犠牲者多発時代を再現しているようです。

現地では昔から日本のバイクメーカーが安全普及活動を継続していますが、事故数低減は難しい状況です。

安全につながるオフロードライディングを

そんな状況ですが、趣味としてのバイクファンが着実に増大しているようです。リッターバイクなど複数台所有する熱烈型も意外に多いのですが、とりわけモトクロスやエンデューロなどのオフロード系バイクの販売が盛況で、サーキット系やツーリング系はオフ系よりもマイナーな状態です。

技術レベルの高いライダーも増加傾向にありますが、一方でオフ専用ウエアを使わずカジュアルな日常着のまま、ライディングフォームなどまったく関係なしにオフロードを全力疾走するツワモノもいました。

そんなライダーは、きちんとした基礎力充実には興味はなく、ともかく速ければいい。カッコ良ければOKということでしょう。行けるだけ行け!根性と度胸で行け!というマインドのライダーは、日本よりはるかに多い印象です。 ちゃんとライディング用の装備品を身に付けて、インストラクターから注意事項と練習のポイントをよく聞き、基礎練習をしっかりやって徐々にレベルアップしていくのが一般的な日本人ですが、タイではそれは少数派だと感じました。

よって次回のレッスンでは、バイクを使ったゲームを取り入れて楽しさを優先。その間にライディングの重要ポイントを、サラッと取り入れるような構成を考えています。しっかりした装備と整備を前提とした、公道での安全にきっちりつながるオフロードライディングこそ重要です。

わずかでもいい。まずはオフロードライダーの市街地での事故低減。これぞ、私が今やれるアクションだと思っています。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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