その昔、ある損保会社の依頼で、バイクショップの集まりに向けて全国各地へ講演に出かけたり、その会報誌にコラムを長期連載していました。

当時はバイクの試乗記事やライディングテクニックの原稿を書くのがメインの仕事でしたが、バイクショップそのものにも興味を持っていたため、入ったことのないバイクショップへアドリブで飛び込むこともありました。

「ちょっとバイクを見てもいいですか?」のあいさつだけして、スタッフの受け答えや、店内と店外の雰囲気を見ていました。

ある時「柏さんですよね。偵察にでも来たんですか?」と店の方に言われて「いえ、たまたま欲しいバイクが外に置いてあったので」と、はぐらかす私。印象的だったのは彼の笑顔。その時のニコリとしたあいさつは、今でも忘れられません。

ということで前振りが長くなりましたが、今回のテーマは「笑顔」です。きちんとしたあいさつをすることは当たり前として、どんな美辞麗句よりも大切なことは、笑顔ではないでしょうか。

「本当にバイクが好き」という思いを笑顔に

笑顔は簡単そうで実は難しいと思います。作り笑顔は誰にでもできます。でもそれはマイナス。お客さまはすぐに感じ取ってしまいます。ではどうするか──。

お客さまとのツーリングやサーキット走行、モトクロス練習などで、自分もとことん楽しむこと。たとえば「みなさんのケアでここに来ていますが、1時間だけ楽しませてください!」と断りを入れて走ればお客さまは納得するどころか、あなたの楽しそうに走る姿に巻き込まれるかもしれません。

お客様が見たいのは、バイクを売るお店のスタッフの本当の顔。「バイクは楽しくてナンボ!」をスタッフやショップの代表自らが走って、ポロリと自然に出てきた言葉と流れ出た汗も本当の顔の一部です。別に速く走れなくてもいい。お客様と一緒になって懸命に走ること。

どんな素晴らしい接客術や商品知識も、エンジョイしている貴方の笑顔に勝るものはないのです。

ともあれ昔はお客様に対して「ベランメイ」な口の利き方のショップもありました。ショップのオーナーがスタッフへすごい剣幕で怒りまくって、店内にいるお客様がドン引き、というシーンもありました。逆にイマドキのショップは、接客態度・販売手法がシステム化されていて、静まり返って威圧感すら感じることも。そこに距離を感じるのは私だけでしょうか?

自分をなかなか見せないお客様が多くなったのも事実ですが、バイクを売る方は本当にバイクが好きなんだという思いを笑顔に変え、お客様に接したいですね。笑顔が本物ならきっとあなたにファンがつくと思います。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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