好きなバイク関係の仕事から生まれる、本物の笑顔を
商品知識を含めた接客能力や整備力の向上、綺麗なお店作り、お客様との接点を持つためのこまめな各種案内やイベント開催など、やる項目だけでもたくさんあります。
「基本のキなんて当たり前。どの項目もしっかりやっているよ!」というショップも多いでしょうが、それぞれを少しだけ深掘りしたいと思います。基本には、ゴールなどないのですから。
まずは商品知識。各販売店にはメーカーから配布された詳細データがあり、自分の経験を交えて自分の言葉でお客様に接します。お客様の胸に響くようにエンジニアやデザイナーの主旨を深く理解し、そのバイクにとことん惚れて売るべきです。どこで買ってもバイクは同じ!と言わせない原点はここにあります。
それほど惚れていないバイクの場合はどうするか?例えばツーリング性能が良いと判断したら、荷物積載時の操縦性や燃費、快適性などにフォーカスします。
いずれにしても詳細データなどに関心を持っていないお客様は、イマドキは普通ですが、それでも以上の要件は欠かせません。自信を持ってお客様に接することが何よりも大切です。お客様の言葉を積極的に聞く、聞き上手になることとセットです。
メーカー主導の店舗や多くの系列店を持つ大型販売店では、すでに綺麗な内外装になっていると思いますが、ショップの規模に関わらず、例えば清潔なトイレ内でも記憶に残る作りは低コストでも可能だと思います。
「清潔だけど無機質」というより「ドアを開けた瞬間に暖かい気持ちになれる」ことを大事にしたいものです。スタッフやお客様と出かけたツーリング写真やメッセージなどが貼られた、丁寧に手作りされた空間(トイレ)作りは、どこに行っても同じ!とはならない第一歩です。
整備に関しても、写真付き詳細データを提示しながら顧客に対応する、というのは忙しい中では無理かもしれませんが、自分とバイクを大事に扱ってくれる!というショップを期待しているお客様は一定数いるはずです。
整備内容を説明するときに、項目ごとに「○○様、オイルに関しては…」というように、お客様の名前を説明の冒頭につけるのも「基本のキ」かもしれません。「様」か「さん」の使い分けはショップ次第ですが、丁寧すぎるのも距離感が残ります。
忙しくて「できない」は当たり前ですが、「できる」ようにするにはいろいろな壁があるでしょう。でも、壁があるから乗り越える楽しさや喜びが一段と大きくなるのかもしれません。
好きなバイク関係の仕事から生まれる本物の笑顔なら、きっとお客様のハートに火が灯るのではないかと期待しています。2025年をどうぞ笑顔で走り出してください。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。