
イベントではマックメカニクスツールズ企画部の藤原尚氏が司会進行を担当
来日したのは、アジアパシフィック地区担当マネージャーのフィリッポ・アンジュリ氏と製品トレーナーのフェデリコ・フォッサルッツァ氏。製品紹介の前にTEXA社の紹介があり、同社は92年にイタリアで設立された会社で、二輪車や四輪車、大型商用車などの車両診断機メーカーであり、ソフトウエアも自社で手がけているという。なお、日本での同社製品はマックメカニクスツールズと自動車用品卸の他1社が販売代理店となっている。

イベント冒頭でTEXA社を紹介するアンジュリ氏

機器を持って説明するフォッサルッツァ氏
今回、発表されたTEXAのエーミング(機能調整)ツール「RCCS3 EVO」はADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム=先進運転支援システム)が搭載された四輪用の製品となる。
ADASはドライバーの安全性と快適性を実現するためにクルマ自体が周囲の情報を把握。ドライバーに対して表示や警告のほか、ドライバーに代わって走行を制御するなど運転を支援する機能の総称となっている。
代表的なADASとしてアダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、前方衝突警告、車線逸脱警報などがある。主にフロントまわりにカメラやセンサーを搭載しており、周囲の状況を収集・検知するために使われている。
国内では21年11月以降に発売された国産車には搭載が義務づけられており、今後は国内を走るほとんどの車両がそれに代わるとされている。
ただ、ADAS搭載車はフロントバンパーやグリル、フロントガラスの交換や脱着など行った場合、エーミング作業が必要になってくる。また、24年10月より開始されたOBD(オン・ボード・ダイアグノスティクス)検査では、修理や部品交換後にエーミングを行っていない場合は“特定DTC”(ダイアグノスティクストラブルコード=OBDによって不具合と判断された場合、車両のECUに故障コードが保存される)として検出され、車検不合格になるという。
実際、四輪メーカーではすでに自社製品専用のエーミング機器を販売店やサービス工場で用意している。しかし、車種別に異なる校正機器が数多く必要で、それに伴う保管スペースや、エーミングに用いる作業スペースも車両1.5台分の面積が必要になる。また、整備解説書に沿った方法では、作業者2~3人を配置し時間も1台あたり30~40分要するという。

実車を使ってデモを開催。イベントはネット経由でライブ配信された
RCCS3 EVOでは、そうした事象を解決し作業時間を大幅に短縮するツールとしている。
前述した車種別の校正機器を不要とし、1台のモニターのみで解決。スペースもほぼ車両1台分の面積で作業が行えるという。さらに、作業者も1人5分ほどで行えるようになっており、国産はもちろん輸入車も含め90社以上のメーカーに対応するなど汎用性も高い点も特徴としている。
アンジュリ氏は自社製品について「元々、二輪車・自動車・商用車メーカーと共同で車両診断機を手がけていたが、後にメーカー純正の品質管理規格を取得したことで純正と同じ高いクオリティで作り上げることができている」と強調する。
イベントでは、現在発売されているTEXA社の診断機においてアップデートされた機能「IDC6」も紹介。AI(人工知能)を活用した最新のソフトウエアで、日本語でのコミュニケーションにも対応。デモでは、車両整備に関する質問として「レーダーのキャリブレーション(校正)を行うには」と、モニターを介してチャット形式で質問をすると、日本語で作業手順を回答するなど高い認知・会話能力を備えていることが示された。同機能はネット回線を通じて、現在利用しているTEXA診断機をアップデートすることで利用可能だという。なお、日本ではマックメカニクスツールズ取扱いのTEXA製品のみがアップデートに対応している。
デモンストレーションを行ったフォッサルッツァ氏は「車両の状態を調べるだけのスキャンツールとは違う。故障やトラブルを解決に導くツールである」と主張した。

チャット形式でAIに質問すると日本語で操作解説が表示される
レーダーを搭載した二輪車用エーミング機器も導入
四輪向けに発表された今回のTEXA製品は、二輪車のARAS(アドバンスド・ライダー・アシスタンス・システム=ライダー用の先進運転支援システム)搭載車向けエーミング機器もラインアップしていることも言及。ドゥカティやKTM、BMWモトラッド、ヤマハ、カワサキはフロントにレーダーを搭載したモデルをラインアップしており、それらの車両に特化したシステムとしている。
現在ラインアップする二輪車向けのOBD-Ⅱ接続診断機「TEXA TXB2」(テクサ・ティーエックスビー・ツー)では既に対応しており、海外のヤマハ販売店では以前より同社の製品を使ってメンテナンスやエーミングを行っているという。また、TXB2も前モデルのTXBよりバージョンアップ。処理速度が速くなり、最新世代のブルートゥースを採用し、接続端子もUSB-ソケットを採用。パソコンとの高速接続が容易になったとしている。
アンジュリ氏は今後の二輪車はレーダー搭載モデルが主流になると述べ「もはやレーダーがついていないと安全に走りを楽しめない」と力を込める。一方、フォッサルッツァ氏は「日本はイタリアと同じ。モーターサイクルにパッションがある。また、安全に走りを楽しむことも共通している」と主張し、日本の二輪車市場へ期待を寄せた。
イタリア本国ではすでに発売中で、日本でもマックメカニクスツールズからまもなく発売されるという。なお、TXB2は現在、月々1万円台からの法人向けリース契約も設定しており、入手しやすい環境を提供している。

二輪車エーミング用ターゲットを使った作業イメージ

TEXA TXB2
▼TEXA TXB2/マックメカニクスツールズオリジナルジャパンケーブルセット=ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、ハーレーダビッドソン、BMWモトラッド、ドゥカティ、KTM、トライアンフモーターサイクルズ各銘柄のOBDユーロ5対応ケーブル付属。▽税込価格=64万9800円
▼ARAS(二輪)エーミング用ターゲット/税込価格=77万5500円
▼対応OS=Windows10・11のみ▼推奨PCスペック=CPU・Core5以上、メモリ・8GB以上。▼主な機能▽故障コード読み出し▽ライブデータ取得▽アクティブテスト▽作業手順書▽診断結果のプリントアウト――など