今回は「ライダーを育てる」という内容です。といっても「それは上から目線!」などとお客様から突っ込まれる方法ではなく、あくまでもショップ自身の発展成長のための提案です。

「部品がうまく取り付けられないので方法を教えて」と電話がかかってきた、知人のショップのことを取り上げてみます。

電話先は数カ月前に新型車をお買い上げいただいたお客様ですが、「対応はできかねます」と返答したとたんに感情的になったというのです。うまく取り付けできないので、イライラしていたのかもしれません。

ショップとしては納車の段階で「自分で購入された部品・用品などについてはご来店の上で要相談となります」と、口頭および書類でひとこと触れておくといいですね。

と、ここで話は終わりではありません。「そんなことは常識」だからと片付けない方が良いのではないでしょうか。

杓子定規な対応は楽ですが…

「取り付けのサポートは有料となりますが、受け付けていますよ」という案内も可能なはずです。クルマ用タイヤの世界では、ネットで買って専門店で取り付けることがすでに一般的になっています。タイヤに限らずいろいろなものをセットアップすることが、バイクの場合は「取り付けそのものを楽しみたい」というお客様の欲求を満たすことになり、それはバイクショップの仕事のひとつになるかもしれません。そこでノウハウを教えるのはお店の利益に反すると判断するか、それをチャンスととらえるかです。

お客様と一緒に部品用品を取り付けることは、そのままバイクへの愛着を促進し、同時にショップとの絆が強くなるチャンスかもしれません。

何でもかんでも杓子定規な判断による言動・行動は「どこのショップに行っても同じような対応なんだよな」と思われ、むしろ距離感を大きくするかもしれません。

バイクの整備や装備に関することだけでなく、ちょっとした取り回しや乗り方など、来店しなければ手に入らない価値あるノウハウの提供をお客様へ行う。それは時間と手間をかけず、ほんのわずかな一言や仕草でいいのです。他の誰かのためでなくあなたのためだけ、という絞り込みです。

そうしてお客様一人ひとりを大切にして、ちゃんとご来店いただき乗り続けていただくことが「いつまでもバイクから降りないライダーの育成」に繋がるのではないかと思うのです。スタッフが数名いるショップの場合は、それぞれの顧客に関する情報を共有しておくことも大切です。温度差があっては、お客様との距離は縮まらないからです。

コンビニでの買い物とはわけが違うバイクの世界。まだまだやるべき事はあると思います。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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