第1回としてお伝えするのは、当地イタリアの2メーカー。ドゥカティとファンティックだ。

終始賑わっていたドゥカティブース
ドゥカティ新型V2 軽量化に自信
現地時間5日17時30分、赤いブースが黒山の人だかりに埋め尽くされんとしていた。別棟で行われた他社発表を泣く泣く切り上げてきた記者も、招待状を握り締め分け入っていく。そんな注目のプレゼンは、1時間35分を超すものに。なお他社では30分が相場だ。
壇上に立った同社CEOクラウディオ・ドメニカーリ氏は冒頭でこのように語った。
「会社は非常に良好な状態だ。実際、これは新製品の数によって示すことができる。24年と25年に向けて既に8台の新しいバイクを発表したが、さらに6台のバイクが(市場に)登場する。そのうち2台を今夜ご覧に入れる」

パニガーレV2(左)は17kg減、ストリートファイターV2は18kg減を達成
そしてヴェールを脱いだのが新型パニガーレV2と、その兄弟車であるストリートファイターV2だ。とりわけ強調されたのは軽量化。新型パニガーレV2は従来機種より17kgも軽くなっており、その価値を示すため、壇上に17kg相当の荷物を持ち込んで比較してみせた。
「私たちは、これまでで最高のツインシリンダーを作り上げた。その強みは軽さ。これがドゥカティの哲学だ。バイク、スポーツバイクに情熱を持っている人は誰でも、軽量化の重要性をよく理解している。非常に軽いバイクを作りたいとき、まず着手するのは最も重い部品であるエンジン。既に発表されているエンジンは、重量が54.5kgしかない。レーストラックでの使用に非常に適しているが、中速域でもかなりのトルクを発揮する」
1994年登場のドゥカティ746から始まる、同社ミドルスポーツバイクの伝統を継承するパニガーレV2。その最新鋭機は軽さを武器に「より乗りやすく、プロライダーでなくとも多くのラップを走ることがでる。つまり、より楽しめる」ことを目指したという。
パニガーレV2の開発を統括したドメニコ・レオ氏(Head of Product Marketing)は、既存機種の改良ではなく「白紙からスタートしたからこそ、車体重量17kg減という結果を達成できた」と胸を張る。開発コンセプトの決定からコスト、タイムラインといった全てを管理してきた彼は、試乗・評価も行ったという。自らも元来エンジニアだが「ユーザー視点で試乗し、(技術陣に)フィードバックするのだ」と。17kgもの軽量化を果たし、最大トルクの70%をわずか3000rpmで発揮するという性能を誇る新型パニガーレV2だが、そうしたスペックだけで市場に歓迎されるわけではないことをドゥカティは知っている。
「24年のMotoGPでも、ドゥカティ陣営は8人のライダーが切磋琢磨しながら様々な乗り方で結果を出した。特定の誰かが速く走らせればいいというものではない」

ドゥカティの新型車開発を統括したレオ氏
そういうバイクの造り方をしているのだ、とレオ氏。ちなみに自身の乗るドゥカティを1台選ぶとすれば何か、と問うてみると。
「ハハハ、用途によって乗り分けるのがベストだけど。強いて言えば、そうだね……モンスターかな。僕が20歳の時に初めて買ったバイクだから」
それを今も大事に持っているのだと、レオ氏は熱きドゥカティスタの顔を見せてくれた。

ドゥカティ スクランブラー10周年を記念したRIZOMA仕様も注目を集めた
ファンティック、オンロードに野心
ファンティックは5日の開催初日を待たず、4日午前にプレス発表会を行うと発表。当日早朝にミラノ入りした記者は、半信半疑で会場へ。どうにか所定の場所に辿り理つくと、軽食と飲料が用意され、数多くのプレス陣で賑わっていた。

プレスデー初日を待たず開催されたファンティックの記者発表会
プレゼンテーションが始まると、CEOのマウリツィオ・ロマーノ氏が登場。ファンティックの歴史がレースへの情熱と成果と共にあることを語った。
「私はファンティック・レーシングを非常に気に入っている。会社の製品の競争力を決定づけ、全製品の開発を促進する源であり、本当に私たちの誇りだ。非常にモチベーションの高いチームで、彼らは朝起きて、前の日よりも良い成果を上げるために何をすべきかを考えている。レーシングの製品と成果は絶対に重要だ」
そう語り、24年シーズンのモトクロス、エンデューロ、Moto2、ラリーにおけるファンティック・レーシングの活躍ぶりを紹介した。
とりわけ23年から参戦しているFIMロードレース世界選手権のMoto2クラスで、24年はアーロン・カネット選手がランキング2位を獲得(※ランキングが確定したのはEICMA開催後)。ストリートでのプレゼンス向上が進むと見られるこのタイミングで、同社は本格的ロードスポーツ「イモラ」と「ステルス」を発表した。
それぞれ500ccと125ccがラインアップされ、500ccモデルは子会社のモトーリ・ミナレッリが新たに開発したDOHCエンジン「MM460」を採用。このMM460は人気機種「キャバレロ500」シリーズの新型車にも搭載される。

イモラ/ステルス(右)に加え、人気のキャバレロ最新型を発表(左)
なお、ボローニャにあるモト―リ・ミナレッリの工場では、ファンティックモーターサイクルの組み立てが行われている。デザインや開発のみならず、生産までイタリアで完遂していることもまた、ファンティックの誇りだ。

EICMA2024会場ではイモラ500も展示
オフロードよりも格段に市場規模の大きいオンロードのセグメントで、台風の目となるか。日本においては輸入代理店モータリストより、25年3月デリバリー開始と発表されている。ステルス500、イモラ500/125も順次導入予定だ。