スクーターを主力製品とする台湾KYMCO(キムコ)の100%子会社、キムコジャパンが昨年設立された。同社社長に就く平山雅浩氏は二輪畑での経験は長いが、日本での二輪業界では比較的に目立たぬ存在であった。企業経営では人生や仕事での経験が大きく反映、影響されると考える。本紙は平山社長に職歴や仕事での経験、志、人生観などについての取材を行い、経験や考えを語ってもらった。

──これまでの経歴は。

「94年に社会人として得意な語学を生かし、二輪車販売店の海外事業部に入社した。主に中古バイクの輸出営業と貿易業務に約2年間従事。その後98年に貿易会社に移り、逆輸入車と車両輸出を中心の仕事を経験。海外から車両の仕入れ日本で卸し販売の一方、日本から海外へも輸出販売などの国際業務を行った。

08年にはヨーロッパの車両メーカーの海外営業責任者として就任し、世界各国で顧客開拓に貢献できた。13年にはこの車両メーカーの台湾の総経理(社長)としてモノづくりの世界で海外営業、品質・生産管理などを兼務し広く経験を積ませてもらった。そして昨年、台湾キムコが自ら日本進出を果たすため現職に就いた」

──これまでの経験で学んだことは何か。

「私の社会人としての原点は販売店での海外事業の仕事だ。当時の社長から整理・整頓の基本から学び、これが仕事に反映されることなどだ。また、仕事人生の9割は海外を相手にしたもので、世界各国の顧客と商談や交渉を行う経験から、各国々の異なる価値観と仕事のスタイルに対し迅速かつ柔軟な判断力を身につけられたことは大きい。

特に海外ではことばが通じない場合もあり、最後は人対人『信頼』が重要なことを身を持って経験した。また、車両メーカー時代の台湾でのモノづくりも貴重な経験だ。開発から品質管理、営業が一体にならなければよい商品が生まれないという使命感、情熱であり、そして妥協もしなくなる。造った1台が遠い国でお客様が貴重な生活費を節約し、その中から商品を買ってもらえるという、造る側の大きな責任、そして達成した喜びも学ばせてもらった」

──キムコジャパンをどのような会社にしたいか。

「車両メーカーとしての誇りと責任を持ち『この1台』を買ってもらうために投資してくれた大切なお客様ひとり一人に安心して、そして誇りを持ってもらえる会社にしたい。さらにお客様自身がキムコファミリーであるという自覚を持てるように、我々がしっかりと母体として存在していかねばならない。そのためにも社内では自由と自律を尊重し、多様な個性と強いチームを源泉とする組織をつくり、私たちがお客様のために一つになりたいと考え

ている」

──企業経営で重要と考える事柄は。

「私の職位としての目標は全社員終身雇用だ。それだけに仕事に誇りと喜びを持てる会社にしていくことが何より大切と考えている。人材は宝というが、人が各々の能力を会社や仕事、お客様のために最大限に発揮した時、それがエネルギーとなり大きな成果を上げるという場面を今まで何度も経験してきた。これを発揮させるためには強い信頼関係がないと絶対に成し遂げられない。だから社員がキムコの顧客満足のため、そして日本でのキムコ発展のために能力を最大限に発揮できる環境をつくることが私の大きな責任、役割だと強く思っている」

──社内や販売店に対しリーダーシップをどのように発揮していくか。

「社内では〝不言実行〟と考える。よほど必要でない限りは多くは語らず、実行することで導きたい。海外での経験から、日本人の特性よりも、スピーディかつフレキシブルな発想を社員が持てるように自らが行動することを心掛けている。

また、販売店様にはキムコの真の姿と、本来の商品価値を証明して見せること。これが私の最大の使命の一つでもある。そのためにはキムコとしてゆるぎないプライドを持ち、常に新しい挑戦を続けて、キムコの本気度を見せたい。

一方では各販売店経営者様らの意見やアドバイスを重視し、積極的に取り入れて形にしたい。販売店様と共にキムコを発展させることが目標だ」

──自ら長所、短所を挙げるとすれば。

「長所を挙げるなら、ネバーギブアップ精神だけは誰にも負けない自信がある。短所は何事にものめり込みやすく、こだわりが強いので迷惑がられることがある。これまで失敗も多くしてきた。日本人ならではの特性や仕事の仕方などが、海外では通用しない。こちらが優位な立場にあり交渉権があっても、遠慮してはっきり考えが伝わらない時、相手のペースに引き込まれ、交渉が思うようにいかないと悩んだ時もあった。だが、ある方に『自分が日本人であることを忘れてしまえばいい』と助言され、それ以後、悩みが解消され気が楽になった」

──人として大切であると考える事柄。両親からの教えなどは。

「当たり前だが、礼儀そして誠実さと考える。幼いころから母親からは『嘘はつくな』とよく聞かされた。これが今までの人生の中で一本通っているのだろう。先にも挙げたが、仕事では駆け引きがあり海外ではことばが通じないこともある。そうすると最後は信頼や人間性がものをいう。

社会人として働き始め、これまでいろいろな人とのご縁を頂いた。今度はこれまでの経験すべてを、キムコで出して貢献したい」

画像: キムコジャパン 平山雅浩社長/経験「全てキムコで出す」

紙面掲載日:2016年3月11日

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