SPIDIは、1977年にライディンググローブのメーカーとして創業。現在はグローブだけでなく、レザースーツやジャケット、ブーツなど幅広くライディングギアを展開。レジェンドライダーのケニー・ロバーツ選手をはじめとした世界のトップライダーが同社製品を使用してきたことでも知られている。
同社では、WGPやワールドスーパーバイクなどのレースを通じたデータが製品づくりに活かされているのはもちろん、社内に「セーフティーラボ」と呼ばれる研究施設を持ち、測定装置を使って日々安全性に対する実験を行っているという。さらに、イタリアやドイツの大学と産学連携で研究を行うなど、高いレベルでの開発技術を持っている。
SPIDIのセールスディレクターであるシモーネ・フィン氏は「56designと共に展示会ができて光栄だ。他の国ではなかなかこういう機会がないが、日本は人々がお互いをリスペクトして、暖かい国だと思う」と話す。
フィン氏の日本市場に向けたおすすめ製品は、ソフトシェルパッドが装備されたフード付きの防風ジャケットで、このタイプはヨーロッパでも近年流行しているという。また、メッシュ生地の部分遣いによって通気性を向上させたジャケットも日本の高温多湿な気候に合うといい、これはウィンドブレーカーを中に着ることで長いシーズンにも対応できるようだ。
グローブは、去年から多くの製品にスマートフォンなどのタッチパネルに対応させ、特にツーリングモデルでは標準になってきているとのこと。
元MotoGPライダーで56designプロデューサーの中野真矢氏は、現役時代にSPIDIのレーシングスーツやグローブを使用し、製品の品質の高さや真摯な企業姿勢に信頼を置いている。
中野氏は「SPIDIは非常に真面目で研究熱心な企業。製品は以前から日本に入っていたものの、あまりPRをしてこなかったような印象がある。改めてテクノロジーの高さや品質の良さをPRしていきたい」と、今後の日本での展開について話す。
56designを軸にアジア市場を広げたい
SPIDI セールスディレクター S・フィン氏
──イタリアと日本の製品との違いや、日本のモーターサイクル文化に期待することは。
「20年前と比べると日本のメーカーのウェアはとてもファッショナブルになり、クオリティなども上がっている。反面、セーフティーに対する注目は少し落ちているような気がしている。ヨーロッパでは、CEという厳しいルールがある中で各社が安全面について試行錯誤しているので、日本もそこを忘れないよう期待している」
──安全面での御社の強みは。
「40年以上の研究による自社開発のパッドがある。当然CE規格に合わせて作っているが、CEをクリアするだけが目的ではなく、基準より更に上の安全性を目指しつつ、快適性も追求している。軽くて着け心地の良いものであれば走りに集中でき、安全にもつながると考える」
──ライダーの安全性で重視している部位は。
「背中の保護を重視している。ヨーロッパでは、胸部はもちろんだが統計的に背面の保護がとても重要だと言われている。個人的な意見では、ヘルメットが重要であるのと同じように、バックプロテクターが重要だと考えている」
──現在のメインのマーケットと、今後注力したい国は。
「現在はヨーロッパ市場がメインで、特にイタリア、フランス、ドイツ、スペインで売れているが、将来的には、これからバイク文化が大きくなると思われるアジア市場を広げたいと考えている。56designのコンセプトは〝ライフ・ウィズ・モーターサイクル〟で、SPIDIが提唱する〝モータースポーツ・ライフスタイル〟と目指すところが同じ。日本はとても重要なマーケットだと考えていて、56designを軸にアジアに発信していきたい」
(※インタビュー取材は2019年秋に行われたものです。)