既に発売中のモデルとはいえ、数日前に東京モーターサイクルショー会場で展示されたモデルに乗れ、「この仕事をやっててよかった」と思う瞬間です。媒体社として呼ばれ、紙面展開するのは当然なのでしょうけども、最新モデルに乗れるというのはワクワクしました。
でもですね、呼ばれて行ったら、逆に「乗らなくてはならない」のも事実であります。
メーカーの開発や広報、営業の方々がいて、周りは百戦錬磨のハイスペックな技量を持つジャーナリストやカメラマンの皆さん、そして、「こかすんじゃねーぞー」と語りかけるような、ピカピカのマシンが“どうぞ”と用意されるわけです。「最新型やいろんなバイク乗れて、いいですね」なんて言われたりもしますが、これはこれで、プレッシャーです、かなり。二輪車新聞社という会社の看板も背負っていますし。
今回は、前回ブログで書いた、ロッシのRC211Vに試乗した時のようなプレッシャーはなく、むしろ進化の内容をなんとなく知っていたのもあって、試乗会はかなり楽しみでありました。
初代CBR900RRから25年目にして多数の電子制御デバイスを投入するなどした最新のCBR1000RR。ABS、電子制御スロットル、トラクションコントロール、エンジンモード、エンジンブレーキ制御などに加え、SPモデルはチタン(!)のタンクにクイックシフター、オーリンズの電子制御サスペンションを装備であります。
当然、新デザインの車体であり、フレームなどもいろいろ手が入っていますが、どれをとっても定食のメインを張れそうなおかずが満載であります。例えは悪いですが、付け合せのお新香にだって、相当に良いものを使ってるようなイメージです。
当日、雨こそ降らないものの前日までに降った季節外れの雪のせいで、標高によってはまだ積雪が残った富士山周辺。道を外れると真っ白でした。
時折、濡れた路面となる周辺道路を走りましたが、本当に軽くて、扱いやすく、怖さを感じずに頑張れる感じで、思ったように動く車体は相当に楽しかったです。
様々な細かいことを車体がやってくれ(しかも、それが自然で分からない)、次のコーナーが迫ってきても、ブレーキ、シフトダウンでほぼ失敗はしないだろうと思え、安心感は絶大なものがありました。
うまいライダーをたくさん見てきて、そしてたくさん抜かれてきて、「あのくらいできたら楽しいだろうな」と思っていましたが、このバイクなら自分もやれる、過信は禁物ですが、「できるかな」だったアクションが「できるだろう」に変わるのは本当に走るのが楽しくなるものでした。
オートバイもスポーツという面がありますが、サッカーではその道具の1つとして、アディダスのメッシモデルのスパイクがあったりします。しかし、それを履いたところで、メッシのドリブルはできません。このCBR1000RR SPもメッシのドリブル級の走りをすべてのライダーにもたらすモデルではないのかもしれませんが、だいたいどんなボールがきても確実にトラップはしてくれて、ちょっとシュート力をアシストしてくれる、そんなシューズのようなモデルな気がします。
「パスが来る、足元に止められるかな」だったのが「足元に収まるだろうから、次のプレーをどうしようか」に変わるのは、相当に楽しいでしょうし、得点力もあがるでしょう。練習、経験を充分に積んだ後に味わえる境地に連れていってくれるマシンなのかもしれません。でも基本的にバイクは人が操ってナンボであり、転倒しないわけではありません。あくまでも助けてくれる道具であるというのを、忘れてはいけないのであります。
二輪車新聞記者 猪首俊幸