2014年5月16日に日本自動車工業会(自工会)や全国オートバイ協同組合連合会など、日本の二輪車関連8団体が掲げた首記の大目標の、2020年国内二輪車市場100万台プランの達成実現が、遺憾ながら不可能な状況になった。昨年、19年度の年間販売台数は36万2304台で目標の4割以下に過ぎなかった。

聞き飽きたことではあろうが、日本での年間最多販売台数は1982年の約328万台である。それが90年には年販200万台を割り、2000年にはついに年販100万台を下回ったが、その後も基本的には一貫して台数を減じ、10年以降は最盛時の10分の1近辺にとどまっていた。

ロードマップが掲げた政策内容は①安心・安全な二輪車利用環境の醸成②社会との共生の実現③社会基盤の整備④免許制度の見直し⑤快適、楽しさの追求──この5項目にまとめられるものであった。これらの政策目標には、設定当事者以外には政策を具体的に実行する上で分かりやすさがなく、具体策が示されたわけでもなかった。

特に個々の二輪車販売店には不明瞭で、メーカー内部ではともかく、二輪車販売業界に対しては抽象的過ぎて、従って販売店には浸透していなかった。店頭には具体的なマーケティングの展開策として伝えられてはいなかったのである。

例えは悪いが「メーカーの自己満足」に過ぎなかったと言えなくもない。具体的に店頭展開されていた二輪車販売店を寡聞にして知らない。少なくとも販売業界では政策のうねりにはなっていなかったと思っている。例えメーカーによって展開されていたとしても、その掲げるテーマや内容は、販売を実践する「販売店活動として具体化」されていなかった。

ロードマップの掲げる大幅な販売拡大目標の裏で、反対にそれを実際に担う販売店の数は継続して減り続けていた。日本の二輪車メーカーは、商品力は強力で、そのブランドは今尚世界の二輪車生産の4割以上を占めている。しかしながら日本市場においては、その強さは生きていない。優秀な販売店の多くが四輪販売店として成長し転換していった。

そんな状況もあって、社会の交通手段としては拡大する経済力にも押されて四輪車の販売が拡大し、結果的に二輪車の需要を奪い、代替していった。その代替された部分を補うべきサービス・レジャー分野での二輪車の豊かさを追求するマーケティングも提唱されず、展開もされず、二輪車の推販はなされなかった。

遺憾ながら、二輪車取り扱い販売店は旧態依然であったし、新たな商業資本のこの分野への進出もなかった。経済力も弱いままで、メーカーによる現在の社会に適応したマーケティングの展開もされなかった。

2000年以降は一部の外車メーカーからの刺激を受けて、店頭を中心に販売店の革新も目指されたが、それにも拘わらず二輪車の本来の価値である、趣味を楽しく豊かに育てる結果にはなっておらず、中途半端で二輪車の良さを社会に再確認させることもなく、日本の市場が拡大するようにはならなかった。

社会の経済力の向上にともなって、多くの場合全天候型の優れた移動手段である、いわゆる四輪自動車に代替されていった。特に軽自動車が発達した日本ではその点が顕著であった。しかし日本ではすでにその四輪自動車ですら斜陽化しているとみられている。

二輪・四輪の販売の停滞の結果、給油所(ガソリンスタンド)も大幅にその数を減らしている。最盛時の1994年には全国で6万カ所以上あった給油所は2019年末で2万9637カ所となり旺時に比べて半数以下となった。ENEOSが約1万3000カ所、出光昭和シェルが約6500カ所、COSMOが約2800カ所で、これ以下となるとKYGNUSの約460カ所と大幅に少ない販売チェーンとなってしまった。

参考までに1981年から一貫して店舗の増加を実現し続けていたコンビニも2019年には15社5万8250店となり減少に転じた。また身近なところでは喫茶店が1981年には全国で15万4630店であったものが2018年には6万7198店とやはり大幅に減少している。そこにどのような生活の変化があったのか。

なおオートバイ販売店も最盛期には4万店を超えていたが、昨今では7000店位に減少した模様だ。そんな中で日本人の精神生活の基盤である宗教関係では、2018年末で神社数8万1158、寺院数7万7256であり大幅な減少は示していない。

プロフィール

画像: プロフィール

奥井俊史氏 (おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

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