オートバイ販売店には大きく分けてメーカーの正規販売店と、そうでない販売店がある。契約書交換の有無にかかわらず、メーカーが正式に自社の製品を取り扱う(正規)販売店と認めたものと、そうでないものを区別した見方である。顧客にとって両者の機能の間には、結構大きな違いがある。本稿では正規販売店について私の考えを取りあげたいと思う。

メーカーは正規販売店に対して、自社のブランドを付けた新車本体および新品の部品の一定(価格)条件下での長期にわたる供給保証を行う。また、正規のビジネス上で必要な、メーカーブランドの使用権も認める。一方でメーカー製品のアフターセールスサービスの実行を確約させる。

顧客の購入場所や購入形態のいかんを問わない。メーカーがサービスマニュアルなど記載するサービスの内容について、メーカーの定めたトレーニングを受け、メーカーの定めるメカニックスーツに身を包んだメカニックが、マニュアルなどに記載された情報・数値に従い、専用の修理工具(SST=スペシャルサービスツール)も使用して、保証修理も行う。

リコール処理に対応したり、保証クレームに関する修理も行う。リコールや保証については、基本的にメーカーは正規販売店以外での取り扱いは承認しない。非正規店からメーカーに直接に対価支払い請求をしても、メーカーからは還付されない。メーカーの発表するリコールでは、関連の対策改善部品なども正規販売店以外には供給されず、修理内容に関する情報も提供されない。

正規店の場合にはメーカーからは修理をはじめ、販売に関する情報や部品に関するノウハウや情報、必要な対策部品なども提供される。

正規でない販売店も修理マニュアルやSSTなどは、購入することができる場合が多いが、それらを使った実際の修理について、メーカーが実施するトレーニングには参加できない。このトレーニングは多様に高度化されており、実技の実習と知識としての情報について、DVDなども活用して長期間にわたって行われる。

受講内容の進行状況に対応してメーカーが定める資格・タイトルがメカニックに付与される「サービス技術認定プログラム」が存在する。ここで取得したタイトルは、同じメーカーの販売店間を移動する場合有効な資格として意味を持つ。

私が席を置いていた輸入車メーカーでは、かつて資格証明のために、メカニック一人ひとりに資格の「認定・登録パスポート」を発行していた。それは支払い給与の判定にも使用された。

サービスのみならず部品の取り扱いや、本体のセールス技術に関してもメーカートレーニングは行われる。非正規店と最も明確な相違が表れるのは、店舗・店頭のデザインと、その機能(使用する什器類も含めて)であろう。多くのメーカーには、独自の店頭デザイン・ブランドの使用や店舗の設計についてのコンセプトがある。

本社では「ストアーデザイン(SD)プログラム」といわれるものがあった。販売店が拠点の改装や新設を行う場合には、図面の段階で審査して機能やブランドの使用などに関してアドバイスをすることも多かった。

本来はこのようなコンセプトは店舗総体に関するものであるが、一つの販売店で複数のメーカー製品が取り扱われることが多い日本の特殊事情を反映して、一時期まで店舗の一角でのストアーデザイン展開を了承していた時期もあった(その後ブランドビジネスの発展拡大に応じて、少なくとも一店舗全体をブランドに特化することも条件となっていった)。

什器も本来は店舗全体に使用するのだが、同様に特定の指定什器が一定数使用されていればよいという緩和された条件にして実情に対応していた。

ワークショップもしかりで、SSTの設置とメカニックトレーニングの受講は、必須としたところから始めて、ワークショップ全体の設計・内容にまで拡大していった。すべてゼロからの取り組みだったため妥協して現実的に対応した。

修理にあたってはメーカーが供給する純正部品をできる限り使用することとし、それを条件に修理保証を実行した。街に多く存在するカスタムショップに関しては、一切関与しなかった。

正規販売店を対象にして純正部品による「カスタムコンテスト」などを全国展開し、入賞者は秋の正規販売店総会・新車発表会に招待して、大勢のプレス関係者や全国の正規販売店の代表者の前で、壇上からお披露目し表彰して車両のオーナーと販売店で、当該カスタムを実践したメカニックに「誉れ・晴れ・ハーレー」を提供した。

また、メーカー最大のユーザーイベントなどの各種イベントを開催して、顧客と販売店が正式に参加できる大規模な楽しみの機会を提供した。

実際のビジネス運営上では、正規販売店間には共通するコンピューターシステムを構築して、全業務の合理化を推進していた。業務全般にわたるシステムだったが、他社に比べて格別に充実していたのは「顧客データの管理」だったと思う。

既存客のデータ管理は勿論、将来のホットプロスペクト顧客についてのデータを常時30万人以上分を持っており、定めた厳しい基準の下で販売店間とも共有して、CRM(顧客管理システム)を運用し、成約効率を高める上で大変有効だった。

これらの重要なビジネスシスムは、当然ながら正規店のみの特典であり、非正規店には提供されない。正規のビジネスは、このコンピューターシステムに裏付けられていた。(続く)

プロフィール

奥井俊史(おくい・としふみ)
1942年大阪府生まれ。65年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。75年より東南アジア市場の営業を担当し、80年トヨタ北京事務所の初代所長に就任。83年より中近東市場で営業担当。90年にハーレーダビッドソンジャパン入社、91年に同社社長に就任し、19年間に数々の施策を展開し日本での大型二輪市場でトップブランドに育て上げた。09年より現職。

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