キムコジャパンは2020年6月に新体制に移行。代表取締役会長に蔡百誠(さい はくせい)氏、取締役社長には王彦傑(おう げんけつ)氏が就いた。ただ、コロナの影響で蔡会長は昨年10月上旬まで来日が遅れた。20年はユーザーの移動手段としての需要や、移動に適した製品構成とし、ユーザー向け販促イベントを中止したものの、デジタル分野でのPR活動などで販売が拡大。21年は向上した品質と市場での認識を基に、新体制での将来に向けた指針に期待が高まる。

同社では、コロナで経済や社会生活への影響は今後も続くと考えている。その一方では、ユーザーの生活が一変し、通勤や通学時の「密」を避けることができるパーソナルコミューターとしての二輪車が、これまで以上に見直されると発展的にみている。

特に利便性とコストパフォーマンスに優れた、125cc以下の小型スクーターなどは、今後も「密」が避けられる移動手段として、需要が高まるものと強調している。

同社ではコロナ拡大の環境下での活動について、2月から9月までの間、展示会および試乗会などの販促イベントの開催と出展を中止した。10月以降はコロナ対策を実施し、屋外でのイベントに限定し出展を再開。他方で2月以降は、リスティング広告やSNSなどウェブ上での情報発信に注力。同期間は外出自粛もあって公式サイトへのアクセスは、前年の1・5倍まで拡大したという。

コロナの影響により、計画していた新製品の投入が延期となったことから、製品ラインアップについては19年から大きく変わらない内容での展開を強いられたという。

3月の販売ではコロナによる製造の遅れなどの影響で、19年実績を下回ったが、それ以外の月では、前年の実績を上回り、20年の年間販売では前年比で110%の販売実績としており、地道な活動やコロナ需要も後押ししたもようだ。特に18年から販売を開始したコンパクトスクーターのGP125と、欧州向けのハイホイールスクーター、ターセリーSシリーズは、支持を受け大きく販売台数を伸ばしたと強調する。

ATV製品についてはコロナの影響によって、企業の設備投資が縮小傾向であったことから、レジャー施設などからの受注、導入が停滞するケースもあった。一方で、個人需要が伸び、年間では前年比で110%の販売となったとしている。

キムコグループでは例年ミラノで開催されるEICMAでグローバルモデルを発表したが、20年は中止。11月に、ウェブ上でのデジタルプレスカンファレンスを開催し、最新技術や将来を見据えた製品の発表を行った。

キムコジャパンのトップとして着任した蔡会長は、それまで海外営業部としてKYMCO USAなど海外支社代表や台湾本社のマーケティング&商品企画部の部長を経て、会長に就任した。こうした経緯から推測すると、21年の同社は日本市場や流通段階を考査した上で、戦略や計画が策定されると思われる。

キムコ製品はすでに販売店やユーザーへ安全性や品質、機能性などの面でも製品への認知が高まったといえるだろう。製品の信頼性も高く、次期指針の打ち出しにも期待が寄せられる。

蔡百誠会長

2021年1月1日発行・二輪車新聞新年特別号「輸入車/2020年実績と21年抱負」掲載

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