(一財)日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ/鈴木哲夫会長)が統括する国内の二輪モータースポーツ、全日本選手権シリーズにおいて、新たな取り組みが2021年よりスタートした。デジタルツールを使った動画サイトでの配信や、これまでの希望ゼッケンとは異なり、ランキング順に先頭から番号が与えられる「指定ゼッケン」の導入など、新規のファン開拓へ向けた試みが始まる。MFJの鈴木会長が本紙の取材に対し、次のとおり語った。
モーターサイクルスポーツ活性化に尽力
コロナに万全の体制で臨む
昨年は新型コロナウイルスの感染拡大防止策が取られ、政府の緊急事態宣言が発出されたこともあり、国民の生活が大きく影響を受けました。
モーターサイクルスポーツも例外ではなく、昨年は開幕戦の延期から始まり、実質的にシリーズがスタートしたのが夏に入ってからでした。今年も全日本トライアル選手権の開幕戦を皮切りに延期を余儀なくされました。
昨年の各全日本選手権ですが、後半から種目によって当日2レースを開催するなどした結果、競技として体制を保つことが出来たと思います。ただ、全日本選手権に手弁当で参戦しているチームやライダーたちもおり、昨年後半から競技は、そうした人たちのエントリー数が激減すると思っていました。しかし、シリーズ戦が始まると、エントリー数の減少が想定していたよりも少なかったのです。21年も前年並みのエントリー数となっています。
エントリー数に頭を悩ませてばかりではなく、観戦客の減少にも目を向けなればなりません。これまでもファン層の開拓には力を入れてきましたが、コロナ禍においても一層、取り組んでいきます。
モーターサイクルスポーツは、ファンにとってエンターテインメントなスポーツイベントだと考えています。新たなファンの拡大に向けて常に全力で注力しておりますが、原点に戻り、MFJの本来の役割でもある、アマチュアレースを裾野に全日本選手権を頂点とした、参戦者のエントリー拡大も併せて実行していきたいと思います。
今年は参戦する選手やチーム、大会を支えてくださる協賛各社と、開催を待ち望むファンに応えるべく、各会場で新型コロナウイルスの感染対策に取り組み、万全の体制で臨みます。
全日本選手権はMFJがオーガナイザーに
国内の各地域で開催されていた全日本選手権は、前年まで当協会から各地域の二輪車普及安全協会(二普協)へ委託を行っていました。今年からは当協会が主体となりシリーズを管理することになりました。各地域の二普協にはこれまで全日本選手権やレースイベントを支えてくださり心から感謝しています。
なお、現場で活動されているオフィシャルやマーシャルの人たちには引き続きご協力をお願いしたいと思っております。
一方、全日本選手権のモトクロスとトライアルはMSP(Moto Sports Promotion)が運営事務局として主催することになりました。
観戦客向けにコンテンツ充実
スマホに動画配信
今年から、スマートフォンで見られる動画サイトを新たに制作し、同時に充実させていきます。これはスマホ専用の動画配信アプリ「Grooview(グルービュー)」によるもので、同アプリは四輪レースのスーパーフォーミュラで導入実績があり、今年から当協会でも導入します。実際、スーパーフォーミュラでは観戦者の8割がインストールしているというデータもあります。
全日本の開幕戦から導入していきますが、アプリで配信する競技は全日本ロードレースと同モトクロスになります。アプリをインストールすることで、サーキットのどこにいてもスマホで動画を見られるようになります。
会場に足を運んでもらうことは音や匂い、それに臨場感などリアルな体験を得られる点にありますが、観戦するコースは会場が広く、全体を俯瞰することは難しいです。
その点このアプリは、オーロラビジョンと同じ映像がスマホに配信され、先頭を走るライダーや周囲に変化があった場合、状況がすぐに確認できるようになります。また、ラップチャートなども提供するのでエンターテインメント性にあふれたものになります。
すでに当協会の動画サイト「MFJ Live Channel」では実況配信を行っていますが、同アプリの導入でさらに視聴者やファンを増やしていきます。アプリの動画もMFJ Live Channelも同じ動画になります。
配信も従来のコース各部に設置した定点映像も活かしつつ、実況中継はもちろん映像もドラマ性のあるヘアピンやコーナーなど、カメラの台数やアングルも増設し、選手やメカニック、そして監督へのインタビューも増やしていきます。アスリートである選手を中心とした人間ドラマとして伝えていきたいと考えています。
アプリへの配信は同時に英語版のサイトも構築していくので、海外からのファンも増やしていくつもりです。
指定ゼッケン開始
今年から全日本選手権シリーズは、新たなファンを獲得するための一つとして、前年の各クラスのランキング順をもとにゼッケンナンバーを指定することで全選手統一にしました。従来の希望ゼッケンだとやはり選手の実力が分かりにくいと思います。
顔や名前、スキル(実力)を覚えてもらうには、実力順にゼッケンを装着するのが良いと思います。※希望ゼッケン=スポンサー対応などの理由により参加選手やチームが希望するゼッケン番号を取得し出場する。
モトクロス選手権に冠スポンサー
今年からモーターサイクル用チェーン大手の大同工業さんとシリーズパートナー契約を締結しました。大同工業さんはD.I.Dブランドとして良く知られていますが、冠スポンサーがつくのは同競技では史上初のこととなります。21年は「D.I.D全日本モトクロス選手権」シリーズとして、全7戦を予定しているので、注目してほしいです。
今年はMFJ発足から60年
21年はMFJが発足して60年になりますが、記念的なことを行いたいと思っています。決まり次第、発表していきます。また、当協会のホームページをリニューアルしました。以前はスマホには対応していませんでしたが、リニューアル後はスマホにもしっかり対応しています。