東京都内にある二輪車の大型販売店でライディングスクールの受講生Aさんと合流。納車手続き後、新車をクルマに載せて郊外で個人レッスン。最後に受講生宅に行って車庫入れの見本を見せたことがある。

納車時の説明は時間がかかる。それは仕方がない。しかし、納車の喜びで浮き足立っているお客様は、販売店側の重要説明をちゃんと聞いているのだろうか。また、その説明を十分理解できるかどうかは、人によって差がある。なので、説明時の動画を撮って、そのお客様だけが見ることが出来るYouTubeにアップするのはどうだろう。販売店は説明をしたことの証明とクオリティアップが狙え、お客様からの信頼度アップも期待できる。お客様は後で不明点がチェックできる。

売れ筋の機種なら事前に動画を作って、扱い方の詳細を見ていただくという方法も検討したい。制作時間が負担になるかもしれないが、YouTubeアップは慣れると時間はかなり短縮できるし、シンプルな作りで十分だ。

納車説明に続き、運転アドバイスも欠かせない。例えば教習所でも、教官によってアドバイスが異なることが多々ある。販売店でもスタッフによって説明手順や内容が異なる場合がある。説明が一貫しないとお客様は混乱する。販売店スタッフは教え方のガイドラインを作って動画を確認後に、お客様にもその動画をお見せする。販売スタッフとお客様の情報共有化だ。

ビギナーやリターンライダーにとって、最初の大きな不安はガレージや駐車場での出し入れ、取り回しだ。エンジンパワーを使う使わないの選択肢があることを明確にしながら、練習は具体的にやりやすい方法からやってみよう、という「練習の動機付け」を動画で促してはどうだろう。取り回し・Uターンのノウハウを動画にアップしてお客様に見ていただき、販売店スタッフもこの動画でお勉強。

お客様の安全への関心を高めることは二輪車業界にとって非常に重要なこと。せっかく二輪車に乗り始めたライダーには、長く楽しく乗り続けていただきたい。

以前にも触れているが、交差点での事故が全事故の60%を超えているのだから、交差点の右直事故を防止する動画も製作したいものだ。販売店スタッフもお客様とのツーリングでも、その要点を伝える。例えばそれは「交差点通過は速度をわずかでも落とし、早めのブレーキ準備のまま通過」。

安全運転を!という抽象的な掛け声より、具体的な走り方をお客様に伝えたい。

プロフィール

柏 秀樹(かしわ・ひでき) 
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。

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