ちなみにオフロードバイクの登録台数は、これまでは国内全販売台数の10%に満たないのが常識でしたが、今ではその2倍以上に。中古車販売台数を含めると、その勢いは当分増すことがあっても、簡単に落ちることはなさそうです。
理由はいろいろ考えられると思います。中でも、狭い空間に留まらざるを得ないコロナ禍のライフスタイルから、自分時間の増大を含め、美味しい空気を求め、広々したアウトドアエリアへ脱出できることが理由の筆頭だと思います。
オフロード系は絶対的な馬力や速度とは関係なく、バランスをとって自分のペースを保ち、自然の中で自由に走りを楽しめるということが2つめでしょうか。本格的なエンデューロ志向のライダーは、もちろん今でも多いのですが、それ以上に他者と競い合うことよりも、仲間とワイワイやりながら自分で走りについての創意工夫を楽しんでいる方が多いように見受けられます。
3つめは、とりわけ250cc以下のオフロード車では車検が不要であることに加え燃費も良好、使われているパーツも高価なものが比較的少なく、維持費が安く、構造的にシンプル。整備ノウハウを覚えやすく、改造やドレスアップが安価に楽しめるアイテムになっている点でしょう。
4つめは、軽量・スリム・コンパクトなオフロードバイクは、運転スキルアップのベストアイテムになることです。ライダーから、自分の経験値を高めるスポーツアイテムとして見られるようになったのです。特に、大型バイクをより自在に操るためのセカンドバイクとしてのニーズが高い状態です。
オフロードバイクの経験者増加こそが…
富士山麓や栃木など、いくつかのオフロード専用コースを見ていると、小さなお子さんを連れた家族ぐるみで楽しんでいる方が非常に多く見られました。
本格的なモトクロスコースでは、速さを求めて走り込みをする子どもは多いけれど、一方で親御さんがアレコレと口を出さないで、自由気ままに走り込む子ども達の姿も多く見受けられます。
大きく分けると子どもの走りに入れ込む親御さんと、ゆったりと走りを楽しむスタンスの親御さんの2パターン。
お父さんと息子さんは私のバイクレッスンを受け、レッスンの間は奥様と娘さんはゴルフの練習、温泉、買い物などを楽しみ、レッスン終了時間にトランポ(クルマ)で戻るという家族も見かけます。
家族総出のオフロードシーンもつい先日見てきました。お父さんだけでなく、奥様も息子さんも、その妹さんも一緒になって走っている姿を見ていると、実に微笑ましく素敵な家族に思えました。中でもお母さんが一番張り切ってジャンプしていました!
オフロード系に乗っているライダーは長く乗り続ける人が多く、すぐにはバイクに乗ることを辞めない!という仮説を私は信じています。
少子高齢化と言われて久しいですが、ちゃんとオフロードライディングの経験を持つ人が一人でも多くなること──、それは二輪車業界の5年後、10年後にとって非常に大事なことだと思うのです。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。