後継者不在など、事業承継をめぐる問題。二輪車業界でも耳にすることは多いが、これは各業界、そして国の悩みでもある。よって国家予算を投じたサポート事業も出てきている。だからこそ決して先延ばしせず、有効な支援策を知り、活用してほしいと「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)」は呼びかける。

「自分もそろそろ引退を考えているが、後継者はいない。どうしたものか」

二輪車業界に限らず、こうした悩みを抱える中小企業、小規模事業者はやはり多いようだ。

下の図をご覧いただきたい。経済産業省の試算では、2025年には70歳以上の中小企業経営者が約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定とされている。127万人というと、日本企業全体から見ると1/3に当たる。このままでは中小企業・小規模事業者の廃業が急増し、25年までに累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとも経産省は発表している(※1)。

画像: 「中小企業・小規模事業者の経営者の2025年における年齢」 (出展:(独法)中小企業基盤整備機構〈16年度総務省「個人企業経済調査」、16年度㈱帝国データバンクの企業概要ファイルから推計〉)

「中小企業・小規模事業者の経営者の2025年における年齢」
(出展:(独法)中小企業基盤整備機構〈16年度総務省「個人企業経済調査」、16年度㈱帝国データバンクの企業概要ファイルから推計〉)

もはや国家レベルの悩みということだ。

そうであるがゆえに、上限800万円の「事業承継・引継ぎ補助金」など国のサポートが充実してきていることをご存じだろうか。

「事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として新しい取り組みを行う、あるいは事業再編を進めるといった中小企業などを支援する制度です。弁護士など専門家の活用であったり、この先の新たな取り組みに必要な設備投資であったり、そうした費用の1/2~2/3を補助できるので、ぜひ本補助金の事務局にご相談ください」

そう教えてくれたのは、中小機構 事業承継・再生支援部の木口慎一氏だ(※取材当時。現在は離任)。中小機構ではこの事業を担うほか、さまざまなサポート業務を行っている。

【1.円滑化支援事業】
各地域にある商工会議所や地方銀行、信用金庫の相談体制整備を支援。各機関の職員に事業承継や税制の説明をし、相談業務のレベルアップを図っている。

【2.事業承継・引継ぎ支援センター】
国が全国48カ所に設置。中小機構がデータベース運営や実務支援といったサポートを担っている。ここでは事業の後継者を探す経営者と、企業とのマッチング(第三者承継支援)も行う。二輪車販売店のM&Aを成立させた事例もあり、21年度には1514件ものM&Aを成立させている。

【3.後継者人材バンク】
意欲を持った創業希望者(個人)に登録してもらい、後継者を探している小規模事業者とのマッチングをサポートしている。今日では創業希望者に融資する制度も充実しているため、それらも活用。ただし登録には地元商工会議所の創業塾を受講するなど一定の条件もあり、本気度が問われる。

なお最寄りの事業承継・引継ぎ支援センターについては『事業承継・引継ぎポータルサイト』で確認できる。後継者探しに悩む経営者はもちろん、後継者が決まっている事業者も相談できる。「親族や従業員にスムーズに承継できるよう、計画策定などの支援を行っています」と、木口氏はいう。

画像: 事業承継・引継ぎポータルサイトに全国のセンター情報が掲載されている shoukei.smrj.go.jp

事業承継・引継ぎポータルサイトに全国のセンター情報が掲載されている

shoukei.smrj.go.jp

また、事業承継時における経営者保証解除(※2)について、木口氏はこう解説する。

「先代の社長が銀行からお金を借りている場合、経営者個人の信用保証が付いていることも多々あります。これが経営者保証ですが、例えば1億円もの保証があった場合、若い新社長が引き継げるかといえば難しいですよね。そこで経営者保証を不要とする新たな信用保証制度を用いるなどします。既存の借り入れがある場合は借り換えもできます」

事業承継には様々な形があり、国の支援策も充実してきているようだ。木口氏も「後継者が決まるまでは平均して3年程度、既に後継者がいらっしゃるとしても金融機関やお客様との関係を一つ一つクリアしていく時間が必要。それを見越し『(経営者の)体調が良いうちは大丈夫』と考えず、早めに相談・着手してください」と語る。

※1 2025年までに経営者が70歳を越える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定。雇用者は09年から14年までの間に廃業した中小企業で雇用されていた従業員数の平均値(5.13人)、付加価値は11年度における法人・個人事業主1者あたりの付加価値をそれぞれ使用(法人:6065万円、個人:526万円)。なおこの発表は17年当時。

※2 経営者保証解除については、23年4月から、中小企業活性化協議会によるカバナンス体制整備支援の一環として実施。

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