(株)リバークレイン 代表取締役社長 信濃孝喜氏
──今回の取り組みを始めるきっかけは。
「ご存じのようにコロナ禍で二輪免許を取得した人が増えたことで、バイクの販売台数が増え、用品でも売上げが大きく伸びました。ただ、そうしたバイクユーザーが増えたのは良いが今後どうするのか、業界全体でもそこが課題だという認識はありました。
そもそも、日本のバイク業界は30年以上も前からユーザー数が伸び悩んでおり、長期的な課題として未解決のままでした。それがコロナ禍によってバイクが“一時の流行”として終わろうとしている中で、ユーザーの中心世代も50~60歳代になっており、課題の解決に向けてもはや待ったなしという状況です。
弊社は今年で創立24年目を迎えました。手前味噌ですが、業界でもそれなりの影響力を持てるぐらいの事業規模になってきた中で、我々ができることも増えてきたと思います。今の若い人を巻き込んだり、あるいは現在中心になっているユーザーの楽しみ方も含めて、もっと革新的に盛り上げられることが出来るぐらいのプラットフォーマー(サービスやシステムを提供する事業者)になってきたと思います。
現在、Webikeの利用者は一般会員で120万人の会員登録者がいます。そして二輪車販売店では約8000社の法人会員に利用していただいております。弊社も創業時は、バイク業界ではないIT(情報技術)業界からやってきたよそ者みたいな目で見られてきましたが、今は業界の仲間として認められてきたと思います」
──基本方針として◎バイクのあるライフスタイルの定着◎オンラインとオフラインの垣根を壊す◎各地のバイクイベントをバイクショップと連携して開催する──を掲げています。具体策は。
「やはりデジタルサービスであり、そのコアとなるプロダクツが『バイクショップNAVI』です。Webikeのトップページからリンクを貼っておりますが、日本全国の販売店が探せるほか、自分に相性の良い、あるいは愛車のメンテナンスを得意とするショップなどを検索できるようにしたサービスです。
このサービスを中心にお店のファンを繋げて、お客様同士のコミュニティツールとして活用してもらいます。使い方も、店舗主催のツーリングに参加表明したり、今日お店に行くと常連の誰かがいる、というのが分かるなど、そうしたサービスを提供していきます。
販売店様もSNS(会員制交流サイト)を中心とした各種デジタルツールを使って、自前のサービスやユーザーに対して様々なアプローチを行っておりますが、我々のプロダクツであるバイクショップNAVIを通じて、便利で使いやすいようにしていきます。
販売店のイベント向けに無償でポイント提供
もう一つのプロダクツが『WebikeイベントNAVI』です。トップページからリンクを貼っているのですが、バイクに関するイベント情報を日本で一番多く掲載しているサービスになります。イベントはツーリングやミーティング、試乗会やサーキット走行会、それに全日本選手権など規模の大小を含めると年間で約1000件はあると思います。実は人海戦術で、手間と時間をかけて作っています。サービスを提供し続けた結果、ウェブで『バイクのイベント』と検索すると、イベントNAVIがトップに出てくるようになりました。
これから提供されるサービスの一例を挙げますと、販売店様が〝今度ツーリングやりますよ〟というのを登録すると、自社のお客様だけでなく地域周辺の会員にイベント案内のメールをお送りすることができます。Webikeは全国120万人の会員がいるので、そうしたことが可能です。
また、最近のスマートフォンのアプリでは、イベントに参加したユーザーが現地にいるという証明ボタンを押すと特典がもらえるユニークなサービスがありますが、こうした機能を使ってWebikeポイントがもらえるような仕組みを提供することも可能です。『何かイベントをやっていて、Webikeポイントももらえるらしいよ、ちょっと行ってみようか』という具合に、いろんなイベントにユーザーを誘導・集客するサービスを提供することが可能です。ポイント数はまだ検討中ですが、無償で提供します。ポイントもWebikeで用品購入時に使えるのはもちろん、販売店様での商品購入やメンテナンス費用にも利用できるので、どんどん利用していただきたいです。
なお、一般会員が販売店様で新車や中古車を購入すると、Webikeから“納車お祝いポイント”が付与されるサービスを提供しているのですが、昨年の実績では北海道から沖縄まで1800店の販売店様に利用いただいております。販売店様は車両以外の用品を購入してもらえることと、一般会員にとっては購入時からUSB充電ソケットなど便利なアイテムを装備してもらえるので、双方にメリットのあるサービスです。
あと、二輪免許を取る前からもアプローチをしなければいけないと思っています。現在、全国各地の自動二輪の教習課程がある教習所と話を進めている段階です。免許取得者を増やすことも進めていかなければと思っています。
一方、我々自身でイベントを開催していくことも考えております。風間深志さんがプロデュースしている「SSTR」が成功していますが、我々もそうしたツーリングラリー的なイベントを日本全国の販売店様と一緒に開催していきたいです。Webikeのアプリを使って、スタンプラリーのような楽しみ方も提供できると思います。なお、全国各地にある道の駅でも、Webikeポイントが使えるような施策を準備しています。地方の自治体とも連携を深めていきます。
アプリはコミュニケーションツールへ深化
そうしたサービスの中心となるのはやはりスマートフォンです。現在、約23万件ダウンロードされているWebikeのアプリですが、4月からは同アプリに「Webikeヤエー!!」機能(ベータ版)を搭載しました。「ヤエー」と呼ばれる、ツーリング先で他のバイクとすれ違った時にピースサインや手を挙げるあいさつがありますが、アプリを搭載した人同士がお互いにすれ違うだけで記録が残る機能です。ヤエーは、バイクに乗り始めたばかりのユーザーが、片手を離して手を振るのはちょっと危ないのと、シャイな人だとやりにくいと思います。すれ違ったバイク同士で簡単にコミュニケーションが取れて、当日の道のりを振り返られる機能も盛り込みました。全国や各地域でヤエーの数を競うランキングを導入するなど、ユニークな試みも検討中です。色々な拡がり・楽しみ方が増えると思います。
あと、プライバシーの観点上“ヤエーをしました”に留めると思います。移動経路や愛車など詳細情報まで提供すると、色々な問題が出てくると思うので。個人がプロフィール情報まで公開してくれれば、コミュニティが発生して繋がることも出来ると思いますが、最初のバージョンではそうした機能は盛り込んでいません」 (続く)