経緯について東京消防庁に伺うと2016年12月に東京都が策定した「セーフシティ」構想の実現に向けた取り組みの一環として、消防活動の早期着手等による被害の軽減や、都民の多様な要望に応えていくことを目的に導入したという。
具体的には災害時の初動対応に必要な資器材を積むことができて尚かつ、狭くて細い路地が入り組んだ地域に強い、小型で取り回しのよい車両が条件であること。そうした車両を選ぶことで他の消防車両よりも早く、災害・救助の現場へ急行。火災現場では消火活動をスピーディに行うことが可能となり、傷病者への対応も迅速で的確な判断ができるようになるからだ。
さらに東京都では、走行時にエンジン音や排出ガスを出さないゼロエミッション・ビークルの普及促進に取り組んでいることもあり、そうした施策にも合致する車両としてEVトライクが選ばれたという。
「コンパクトな車体は利点」
足立区の千住消防署へ配備されたことについてだが、同区は狭い道路への割合が高く、災害発生件数が多い地域ということもあり、最も活躍が見込まれることで同署への配置を決定。隊を率いる工藤隊長によれば「千住消防署の近隣では狭い道路が多いのだが、車両のサイズが小さいおかげで、すり抜けもしやすく、一方通行への進入(逆走)も容易」といい、コンパクトな車体が活きてくるとコメント。
「加速も力強いし、シームレスな速さを実感!」
車両の動力性能を隊員たちに聞くと「最初に電動車と聞いた時は消防車が持つ力強い性能が発揮できるのか、心配だった。ところが、実際に出動してみると停止状態からの発進加速が良いし、重量のある資器材を積んでいるにも関わらず、走りに重さを感じなかった。特に信号待ちからのスタートはポンプ車といった車両だと加速までに時間がかかるが、それとは異なり素早く加速していきます」(工藤隊長)。
「二輪車のようにギアチェンジした時のショックもなく、アクセルを踏むだけでスルスルと加速していくのは魅力」(仲野隊員)。
と、かなりの高評価。ちなみに導入して間もないこともあり、街中を緊急走行している時はやはり注目を浴びるとか。
「将来の発展も大いに期待できる」
そして、もうひとつの利点として挙げたのが電気駆動による静かさ。
「排気ガスも出ないし、エンジン音もない。そのうえ走行時の音も静かなので、それまでの消防車と比べると消防署の近隣に住む住民への負担も少ないと感じます。機動力でいえば二輪車のタイプもありますが、それと比べると搭載できる機材も断然多いです。今後の活動においてもできることが増えていくのでは」と、将来の発展も期待できると工藤隊長はコメント。
東京消防庁ではほかの地域への導入の可能性について「ファーストエイドチーム活動の著しい効果が認められた場合は、同様の地域への配置を検討していく」と話す。
これからの新しい消防車両の活躍に期待したい。