ショップの代表は、その変化を敏感にキャッチできるか。例えば、スタッフが抱えている問題点が発覚した時、すぐに解決ができなくても気持ちを共有するだけで、いろいろなことが円滑に進むかもしれません。
ですから、ショップのスタッフ・ミーティングは非常に重要。当たり前のことですが、その当たり前がなかなか難しい。
スタッフの人数が1人から大人数までショップによっていろいろ違いがあるにしても、出来るだけ個別にそれぞれの気持ちに沿うことが重要だと思います。
いつの時代でも、どんな職種でも、誰もが求めているのは「働き甲斐」。そしてその前に「今の気持ちがどんな感じなのか、ちょっとでもいいから共有する」ことではないでしょうか。
毎朝、短時間の全体ミーティング。週1回の少し長めのミーティング。そして月1回の長めのミーティング。あるいは早めに閉店してミーティングをしたり、開催タイミングを不定期にしたりなどして、マンネリ化を避けたいですね。
ミーティングの内容については、心配無用だと思います。
業績!業績!などという仕事一辺倒の課題では息が詰まってしまう。ほどよい課題が出てこない場合、例えば堅めのテーマで「10年後」「家族」。柔らかめのテーマでは「個人的に好きなバイク」。さらに柔らかめでは「好きなアニメ」「欲しいクルマ」など喋りやすいテーマで、その理由や思いを聞いてみる。
短い文章をプリントして、スタッフで分担して声を出して読み上げ、それぞれに印象を語ってもらう方法もあります。いずれの方法でも、そこからちょっとした本音と笑顔が生まれたら最高だと思います。
コミュニケーションの第一歩は“共有すること”
特に若い世代は、自分を表に出すことをためらう傾向があるとも言われています。なかなか自分を見せたがらない。でも、円滑に業務を遂行したいという思いを持っている。
情熱がないわけではありません。むしろ情熱を持っている。でも周囲に悟られたくない。そんな傾向があるのかもしれませんが、まずは自分という個性を受け入れてくれる職場を望んでいるはず。ベタベタのお付き合いは望まないけど、無味乾燥のお付き合いもしたくないでしょう。
ミーティングテーマは時々、バイクに関係ないことが良いのかもしれません。しかし、その点私は真逆です。半世紀にわたってバイクにどっぷり浸かっていながら、スクールのミーティングでは「このバイクの魅力を一言で語るなら!」「このバイクを乗りこなすキーワードは!」という課題が、むしろストレス解消になるぐらいです。スタッフの能力やテンションは実に個人差がありますから、話す課題が重要というわけではないでしょう。
スタッフは人の子、代表者も人の子。完全無欠ではありません。それぞれの長所や弱点、得手・不得手を笑顔で共有することが、コミュニケーションの第一歩かもしれません。
プロフィール
柏 秀樹(かしわ・ひでき)
1954年山口県生まれ。大学院生時に作家の片岡義男と、バイクサウンドをテーマにしたLPを製作。卒業後フリーランスのモータージャーナリストに。各種海外ラリー参戦も含めた経験を活かし、現在「KRS・柏秀樹ライディングスクール」を運営。全国各地で初心者やリターンライダー、二輪車販売店社長・社員に、安全意識・運転技術改善に役立つノウハウ伝授をしている。ベストセラーになったライディングDVD他著書多数。