モトツアーズジャパン取締役社長 原田美和氏

取材に応じる原田代表
二輪車の全国レンタルサービス「レンタル819」やドゥカティ販売店のほか、電動二輪車を活用したアクティビティ施設を抱えるキズキ・グループの1社であるモトツアーズジャパン。2017年より二輪車専門の旅行会社として訪日外国人向けにツーリングツアーを企画・販売しているのだが、コロナ禍が収まってきた23年頃からは円安の追い風もありインバウンド需要が急伸。25年は前年比で1・8倍とツアーの利用者も増加し、そのうち8割が訪日外国人だという。
「富士山周辺を4泊5日で周遊するツアーが特に人気です」と力を込める原田さん。密度の濃いツアーとなっており、初日は東京から出発し温泉地である群馬県の草津へ。2日目は長野県へ向かい松本城やビーナスライン周辺の景勝地を堪能。3日目は山梨県の八ヶ岳周辺を巡りながら、静岡県の西伊豆へ。4日目はわさび田を見学し、箱根周辺を満喫してリゾートホテルで宿泊。そして最終日は箱根で寄木細工を体験、芦ノ湖を経て山梨の名物であるほうとうを味わい、忍野八海を見て帰京する。関東エリアの景勝地にグルメと温泉、それに地元の農産物や日本文化までも体験できるコンテンツとなっている。
同ツアーは、ガイドがつかず参加者にはレンタルバイクと宿泊するホテル、それにルートマップのみ手配する“セルフツアー”なのだが、常に世界各国から申し込みが入るという。ほかでは、東京から出発し伊豆を巡りながら中部、大阪、四国へ渡り愛媛から北上し広島へ。そこから山陰、北陸エリアを巡り、群馬から南下し帰京する16日間のワンウェイツアーも人気だという。
ユニークなツアーでは、原付二種で埼玉県から栃木県を巡るツアーも企画。タイの富裕層に向けたツアーで、モンキー125やダックス125を用い、美女木にある「Cubハウス」1号店を出発。Cubハウスは8年前にタイでスタートした販売店向けのプロジェクトで、現地の人にとって馴染み深いもの。日本でもこのほど導入されたことで、同施設を出発地点にしたようだ。
タイの富裕層に向けた原付二種ツアーも企画。美女木のCubハウスの前で記念撮影
一般道を走行中のようす
その後は川越へ向かい最後は栃木県のモビリティリゾートもてぎへ向かう宿泊を伴うツアーで、タンデムで楽しむ参加者もいたという。
セルフツアーも人気だが、ガイドが帯同するツアーも提供している。ガイドも業界団体の組織である(一社)日本モトツーリズム推進機構による認定を受けたガイドを採用。コミュニケーション能力はもちろん、旅程管理や応急対応のほか二輪車特有の点検、トラブルへの対応力などの知見を備えており、こちらも高い人気だという。
訪日外国人向けだけではなく、二輪車の初心者やリターンライダー向けにも企画旅行を提供している。特に人気のツアーは21年からスタートした、ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)と協業開催する女性限定の「HondaGO公道デビュー応援プリンセスツアー」だ。開始から5年以上を経た今でも、募集を開始するとすぐに定員となり、キャンセル待ちが相次いでいるという。リピーターも数多く、ツアーで出会った人たちとの再会を目的とした参加者もいる。
「実はプリンセスツアーは自社で手がけた初めての国内ツアーでもあります。これまでに延べ500人以上が参加。中には10回以上参加されている方もいらっしゃいます」と目を細める。

開始から5年を経て今なお人気のHondaGO公道デビュー応援プリンセスツアー
二輪車メーカーではホンダの他にもスズキやヤマハ向けのツアーも企画。各社のコミュニケーションプラザやミュージアム等の見学を組み込んだブランド体験型のツアーも提供している。
また、輸入二輪車銘柄ではBMWモトラッドジャパンが企画する国内向けツアープログラムを運営。ロイヤルエンフィールドとも協業しており、日本の伝統文化である藍染めや寄木細工体験を組み込んだツアーを予定している。
日本人向けの海外ツアーも提供しており、今年はドゥカティが100周年を迎えたことで、イタリアからオーストリアまでドゥカティ車でアルプスを横断するツアーを販売中。HMJとも協業し、ドイツやオーストリアをホンダ車で巡るヨーロッパアルプスツアーも販売している。
一方、国際モーターサイクリズム(FIM)と連携したツアーも企画。FIMはモトGPなどを統括しているが、活動の一環として「ツーリング&レジャー」にも重きを置いており、25年にはFIMの部門関係者を招いた「マウント富士ツアー」を主催し催行。参加した部門責任者から、同ツアーをFIM公認のバイクツアーとして継続したい旨が述べられたという。
さらに日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)ともツーリング部会を発足させており、モトツアーズジャパンは副部会長として参画。今後もFIMやMFJと連携したツアーを提供していくという。
25年にはFIM公認のバイクツアーを催行した
訪日外国人の参加者も口コミでどんどん拡がっているが、参加者はなぜ、日本を何度も訪れるのか理由を聞くと「バイクから降りヘルメットを置いて離れても盗難されないことに驚かれます。日本は安全・安心な国であることが認識されています。また、ウイスキーや日本酒、醤油や味噌など、食文化を味わい体験したいニーズも強いです」と説明する。四季折々で多彩な自然風景が楽しめることも選ばれる理由のようだ。
ただ、近年は訪日外国人によるオーバーツーリズムも指摘され、有名な観光エリアでは地元の人たちとの摩擦も生じている。モトツーリズムは、そうした状況を解消する施策でもあるという。
学会でもモトツーリズムを評価している。今春開催した東京モーターサイクルショーのMFJブースで、岡山理科大学の林恒宏(つねひろ)教授が登壇し、トークショーを開催。教授はモトツーリズム研究の第一人者とされており、二輪車の機動力を活かしたモトツーリズムは、訪日外国人旅行者の行動範囲を地域へと拡げ、滞在や消費の分散を促進。地域活性化とオーバーツーリズム、両方の課題を解決する手段として有効であり、観光立国推進基本計画にモトツーリズムが盛り込まれるべきであると述べている。
トークショーでは林教授(左)とモトツアーズジャパンの松崎城(きずき)取締役専務執行役員が登壇した
この3月には旅行代理店大手のJTBとモトツアーズジャパンがインバウンド市場の拡大に向けて基本合意締結を発表。モトツーリズムで新たな体験価値の創出を目指すという。
訪日外国人に向けたツアーはさらなる拡がりを見せるようだ。





