苦労したのは入荷だ。BMWモトラッドの生産拠点は3つ。大別すると大型車両は独・ベルリンで、G310シリーズはインドで、スクーターは中国で生産されている。そのそれぞれが半導体不足、資材高騰、物流費高騰、円安など様々な課題に振り回されている状況であった。「月初にアナウンスされた日本向けの生産計画がうまく進まないことも多々あるなど、毎月見直しに迫られていた」という。
これにより全国の販売店に対しても、達成目標を調整したり、物流が滞る中で「どの機種を優先的に卸すか」調整したりといったことを毎月行ってきた。「優先順位をつけてお届けせざるを得ない場合もあった。23年は出来るだけこういったことがないよう努めたい」と佐伯GMは語る。
グローバルの生産数について完全に日本の願う通りになるか、という課題はあろう。しかし全体的には改善傾向にあるという。23年も引き続き全力で舵取りしていく。
ところで05年の入社以後、BMWグループジャパンの四輪部門で従事してきた佐伯GMは、学生時代にはSR400をカスタムするなどバイクライフを楽しんでいたという。自身初の挑戦となる二輪車ビジネスの世界は、新鮮味あるものであるようだ。
「四輪ビジネスとは全然違うんだなと。二輪車を(商材として)扱っている方も、乗っている方も愛情・情熱が強い。製品で楽しむという気持ちが随所に感じられた」
例えば近隣の販売店同士が一緒になってイベントを開催するという文化。運営の手際などにも感心した。また、販売店のイベントを視察しようと出かければ、早朝の往路でも午後の帰り道でも、高速道路を疾走するBMWのバイクを目にする。
「朝早くからバイクで来場し、イベント会場を思い切り走り、また高速道を走って夕方には帰宅される。なんともアクティブな週末だなと」
時に転倒してさえも、それを楽しむBMWライダーの姿があった。9月に長野県白馬村で開催した「BMWモトラッドデイズジャパン2022ライト」でも、初日に雨中のヒルクライムで大転倒した参加者が、晴天となった2日目に再度挑戦しようとして奥様に止められたというエピソードも。その奥様曰く「修理代が大変なんで」。
「あれだけ派手に転んだのに体は心配ないんだ、と」
笑いながら振り返る佐伯GMは、こうした二輪車の世界に愛着を感じている様子だ。
また、同イベントでは、会場を訪れたライダーの約半数が初めての参加であったことも判明した。
「常連の方がもっと多いかと思っていたが」と驚きつつ、これを歓迎。「せっかく新規に免許取得する方も増えているし、この状況が落ち着いた後も見据えつつ業界全体として盛り上げていければ」と語る。
かねて取り組んできたライセンスサポートも、そのサポート額を2倍に上げ、より魅力的な内容に。新規顧客の 割近くにこれを活用してもらっている販売店もあるとのこと。新たなBMWライダー誕生への「最後の一押し」として大いに機能しているようだ。
そして23年はBMWモトラッド100周年でもある。記念モデルの登場もあるようだ。また22年には限定50台の「M1000RR 50 YEARS M」が3日で完売するなど、好調のスーパースポーツも新型登場が相次ぐ。楽しみな年だ。
全国の販売網は22年11月末現在1店舗増え、62拠点に。今後も着実に充実させ、向こう5年で店のないエリアを開拓していきたい。「最寄りの販売店まで50km離れている」といったユーザーがいないような状況がひとつの理想だという。