2022年は少し変わった傾向があったと感じているのは、KTMジャパンの西光寿ジェネラルマネージャー。これまでKTMやハスクバーナ・モーターサイクルズの購買層は主に「社会的地位も高く、子育てもひと段落して余裕のある方」であったが、現在は「20代や30代の方々がインスタグラムやユーチューブでツーリング風景を発信」しているという。しかも小排気量車だけが新規ユーザーを獲得しているのでなく「900cc~1300ccクラスが活況」とのことだ。
それでは同社が手掛ける3ブランドについて、22年の振り返りと23年の展望を聞いていこう。
▼KTM(オーストリア)
22年前半こそ資材や半導体の不足に悩まされたものの、後半になると生産も回復。「現在は一部のモデルを除き、受注に対して概ね即納できている。23年は全車種スムーズに供給できる見通し」と、西氏は述べる。
本社のKTM AGグループでは、小排気量車とトライアル車を除き、年の前後半で生産ラインを大きく切り替えるという。「1~8月半ばにオンロードモデルを、8月下旬からクリスマス休暇まではオフロードモデルを」という体制だ。後半生産のオフロードモデルについては日本向けにしっかり確保できたと西氏はいう。
注目のロードスポーツRC390については国内供給開始が予定より遅れてしまったものの、「非常にご好評いただいている」とのこと。22年9月の販売台数では、小型二輪上位40機種にランクインしている。
販売店は41店舗。「やや減少傾向にあるが、現在は専売店化と専用CI導入に注力している。また、KTMグループ3ブランドを取り扱う旗艦店『AGショップ』も増加している」という。電動ミニモトクロッサーおよび、50ccモトクロッサーから1300ccロードスポーツまで、充実のラインアップを存分に活かしたいところだ。
そこでひとつカギになるのが、同社が20年より取り扱っているWPプロコンポーネンツ。22年7月に行われたRC390のメディア試乗会でもWPプロコンポーネンツは称賛され、またディーラーの間でも「これはいいね」「こんなに(乗り味が)変わるんだね」と好評だという。
「我々が販売店様に用意したトレーニングは3日間にわたる充実した内容。座学の後にモトクロスコースを走るなどしながら、WPプロコンポーネンツのセッティングとその効果について熟知していただく。これを経た方々により組まれた車両は、それぞれのユーザー様に合った仕様となる。自分の体重に合っていて、動作もしっくりくるというもの」
KTMをはじめ、ハスクバーナ・モーターサイクルズやGASGASの車両用のWPプロコンポーネンツもラインアップ。23年は新型車も多くリリース予定だが、昨年比約140%と販売好調のWPプロコンポーネンツを組み合わせることで、WPサスペンション正規販売店各店の売上拡大につなげてほしいと願う。
▼ハスクバーナ・モーターサイクルズ(スウェーデンが起源)
モトクロスやモタードのシーンで活躍してきたハスクバーナ・モーターサイクルズ。同社の3ブランドの中で高級路線を担い、近年はネオクラシックモデルのスヴァルトピレン/ヴィットピレンシリーズの人気でストリートにも浸透した。
22年はミドルクラスにアドベンチャー「Norden(ノーデン)901」を投入。グッドデザイン賞を受賞するなど、注目を浴びている。同社ではこれを記念したフェアも実施した。
「アドベンチャーモデルとしては軽量で扱いやすく、エンジンやサスのテイストは落ち着きあるものになっています」
ストリートモデルについては都市部を主として、KTMとはまた異なる嗜好を持つユーザーを獲得できるのがハスクバーナ・モーターサイクルズだと西氏は語る。輸入小型二輪車の新規登録台数では、ブランドとして1月~11月の累計で前年比112%となっている。販売店は25店舗だ。
▼GASGAS(スペイン)
オフロードが主となっており、トライアルモデルもラインアップ。22年にはSM700/EM700といったロードモデルも加えた。同社の手掛ける3ブランドではエントリーに近いポジションとなっており「手が届きやすい価格帯になっている」と、西氏は解説する。
販売店は現在13店舗。KTMやハスクバーナ・モーターサイクルズとの併設店が多いが、中にはトライアルに特化したところもあるという。
また、同社では3ブランドの対象モデルに対してサマーキャンペーンを、10~12月には購入サポートキャンペーンを実施。各販売店の販売促進に一役買っている。
23年以降について西氏は「まだまだ日本市場においては若いブランド。免許を新規に取得される方も多いなか、広げていく余地はまだまだある。各方面に積極的にアプローチをかけ、販売ネットワークに加わってくださる方を見つけていきたい」と、抱負を述べた。